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「じゃあ、堂本先生と怜子に念のため伝えておくわ。彼女、一見気難しいかもしれないけど、優しい子だから誤解しないでね。」


そう言って河辺さんは連絡のメールを打ってくれた。




『河辺先生はバッハの曲がお好きなんですか?』


私の言葉に彼女はやや苦笑を漏らすと口を開く。


「ーーー貴女達は、絶対音感持ってる?」

私と千秋はお互いに顔を見合わせると、ある程度はと頷いた。


『やっぱり、音に関しては過敏になりますよね。でも生活音が音名で聞こえて気分が悪くなる、といったことはないです。』

「あたしも。」


「……そう。感じ方に個人差があるとは言うけど、貴女達が羨ましいわ。私の場合は、敏感過ぎるのか、逆に調性音楽の分析の際の旋律や和音の機能がわからなくなるの。各音の役割による表情が付けにくくなる。だから、ひたすら音楽理論を勉強したわ。必然的にバッハに詳しくなった。」


成る程、と二人で頷いた。


「でも、どうせ知るなら小難しいものだけじゃなく、ちょっとした豆知識も仕入れたいじゃない?バッハは糖尿病で亡くなったらしい、とかね。その方が興味がでて覚えやすくなる。」


河辺さんは気持ちを切り替えるようにパチンと両手を叩くと微笑んだ。


「次回のセミナーはパルティーターーー舞曲をやる予定よ。バロックといえば、舞踏会大好きルイ14世。当時はメヌエットが大流行。さて、お二人さん、その理由はご存知?」


私は少し考えてから、彼は自身の権力を周囲に示したかったから、メヌエットが大好きな彼がそれを流行させることで周りへの牽制をしたと答えた。千秋は、ダンスの中でもとっつきやすいメヌエットを流行らせて、参加者を楽しませて油断させることでいろんな情報を収集するためと答える。



「ーーーーきっと間違いじゃないわ。でも、もう一歩踏み込んでみましょう。」


当時は王家とはいえ暗殺も多かった。主な死因は、毒殺と刺殺。社交場で銀食器を使用することで毒殺予防になり、刺殺回避として王の傍には近しい者達を踊らせ、疑わしい者は外側で踊らせる等距離を置かせた。


「メヌエットは強制参加だった。踊れない人はもう大変、マルセーユに左遷よ。案に死ねって言われてるもんだからね。」


当時のマルセーユは湿地熱帯気候のため、蚊が多くパンデミックが起きやすかったらしい。原因不明の感染症に治療法が十分に確立されていなかった当時の人達からしてみれば、相当恐ろしかったことだろう。

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設定タグ:赤井秀一 , 安室透 , 降谷零   
作品ジャンル:ミステリー
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作者名:ナツメ | 作者ホームページ:http  
作成日時:2019年12月9日 22時

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