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「降谷さんについてですがーーー」
『零さん?』
「はい。Aさんの話しを聞いて思い出したのですが、彼は今悪い組織に狙われているんです。勿論、とある機関で然るべき保護は受けているようですが。」
『ーーー零さんが.......』
安室さんのその言葉に目を見開いた。
『零さんは無事なんですよね!?』
私は安室さんの袖を掴むと彼を見上げる。彼は一瞬息を詰めると、ゆっくりと吐き出した。
「今の所は。彼の存在がきちんと隠されているので。ですが、情報が出回ったらどうなるかは分かりません......ですから、今後一切、降谷零という名前を口に出さない方が賢明ですよ。」
『ーーー分かりました、今後彼の事は口にしません。その代わり....』
「その代わり?」
『安室さんが知っている零さんのコト、時間があった時に教えて貰えませんか?どんなことでも良いんです。口外は絶対しませんから。』
「忘れたがっていたのでは?」
『忘れたいですよ。なのに、そっくりな貴方が目の前にいたら、いつまでも忘れられないと思いません?』
「だからこそ、上書きできるのでは?」
『.........それは』
そう簡単にできるものだろうか。言葉を止めた私に呼応するように、顎に指筋を添えた彼は考えこむ素振りを見せる。
他の男にご執心な貴女に少しやけますね、という言葉の割に笑顔を向けてくる安室さんが嘯いているように見えた。どうせ、大人の戯れだろう。こんな小娘をからかって楽しいのだろうか。
『ーーー本気でそう思われたのだとしても、貴方のようなズルい大人には丁度良いんじゃないですか?』
それに貴方のお誘いへの返事はまだしてませんから、そう言う私の言葉を聞いた彼は一転して苦笑を零した。
それを横目で確認すると、笑顔を貼り付ける。
『交際の件ですがーーーとりあえずは、そうですね.....私の先生ということでお願いします。』
「先生?」
『安室せんせー、私に勉強教えてください。よろしくお願いしまーす!』
「..............まぁ、今はそういう間柄ということにしておきましょう。」
彼の知識や教え方の上手さは何とも捨てがたい。交際するかどうかは、もう少し仲良くなってから判断することにした。
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