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『ーーー私?』
笑顔でピースサインをしているのは、恐らく幼い頃の私で。そして、その写真に写る私の水着と、秀一さんに抱かれている子供の水着が一致していることを考えると、これは。
「やはり....あの時の子供がお前だったか。顔や仕草があまりにもそっくりだったからな、すぐに分かったよ。」
秀一さんは口端を上げて目を細めた。
『............』
「お互いに初対面だというのにお前は俺の膝に乗りだし....降ろそうとすればぐずつく。.....それを見た真純が嫉妬する−−−−の繰り返しで大変だった。」
一枚目の写真の秀一さんはサングラスをかけているためその表情こそ分かりづらいが、言われてみれば成る程。確かに彼の口元が引き攣っているように見える。母親達が困惑している彼を相当面白がったそうで、こうして写真が残っているということだった。
『ーーー全然記憶にない、』
「無理もない。あの後すぐに君の母親は事故で亡くなったと聞いた。君の家庭環境も変わり、それに適応するのに必死だったのだろう。」
『ーーー事故?母さんは病気で死んだんじゃ、』
私の言葉に秀一さんは目を細めた。
「ーーーいや、俺は事故だと聞いたが。」
『ーーーそ、うなんだ。ごめんなさい。あまり母のこと......聞いたこと、なかったから。家には写真も見当たらなかったし....聞くに聞けなくて。』
「.......そうか。君さえ良ければ、その写真を貰って欲しい。」
秀一さんは、その二枚の写真を私に手渡してくれた。
『ーーーいいの?』
「あぁ。ーーーそれと、これも。」
懐から出て来たのは真新しいスマホだった。思わず受け取ると、彼の真意を図ろうと見上げる。
「君に連絡をとるのが面倒でな。俺名義で契約した。好きに使って貰って構わん。」
『ーーーいいの?』
「あぁ、そいつに俺の連絡先も入っている。暫くは日本にいる予定だからな、何かあったら連絡しろ。」
『ーーーありがとう。』
スマホを使うにあたり、今迄通り人目のある中での名前呼び.....街で出会った際は知らない人のフリをするよう約束をさせられたが、勿論了承した。秀一さんは何も言わなかったのだけれど、もしかしたら彼の観光とは名ばかりの、実は仕事の延長としてこの日本に来国してきたのかもしれない。
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