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『ーーー私のこと、ご存知だったんですね。』
「これでも探偵だからね。情報収集は基本的に得意なんだ。」
『探偵?........え、ドクターじゃないの?』
私の言葉に彼は一瞬だけ動きを止めて、すぐに作業を再開させる。
「どうしてそう思ったんだい?」
『ーーごめんなさい。私の知り合いに貴方が似ていたものだから。』
「.......それは、先程君が呟いていた"零さん"って方ですか?」
思わず下を向いてしまう。どうやら気づかれていたらしい。
『.........はい、降谷零先生という方です。私と私の母を助けようとしてくれた.......恩人です。』
隣からは一瞬視線を感じたけれど、顔を上げることができなかった。
「.............。僕は安室透。医師免許は残念ながら持ってないな。」
『ーーー安室....さん.....あ、そうですよね。やっぱり人違いでした、すみません。』
「いえいえ、気にしないで下さい。でも、そうだな.....。それ程僕に似ている人なら是非一度会ってみたいですね。」
彼の言葉にハッとする。この世界ではまだ零さんに会ったことはないし、父が経営し母が入院していた緑川病院は存在しない。降谷零さんという人物は、存在しているのだろうか。
『ーーーっ、すみ、ません。今、彼がどこで何をしているのか、私にも分からないんです。』
「それは残念。でしたら、緑川さん。後日僕と食事でもいかがですか?彼の話しだけでも聞いてみたい。」
『......え、後日?』
私は少し戸惑いながら爆弾とそれを解体する安室さんの顔を行き来させる。彼は私の不安気な表情に察したのだろう、あぁ、と頷いた。
「−−−−勿論、この爆弾の解体を成功させた後でね。」
パチンと鳴った音を最後に、カウントダウンが止んだ。時間は丁度三分を切ったところを指しており、私は恐る恐る彼を伺った。爆弾は、無事に解除できたのだろうか?安室さんは左眼を器用に閉じると、ハサミを持っていない左手で私の頭を優しく撫でてくれた。
「−−−−大丈夫。君の未来はこんな所で奪わせないよ。」
手伝ってくれてありがとうございました、とそう言って微笑む安室さんは、やっぱり私の知る零さんの顔だった。
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