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『ーーー手伝います。貴方は作業に集中してください。』
彼の隣に座ると、スマホのライトと自販機の受け口を押さえる役を買って出る。
彼は一瞬動作を止めてから、後ろを振り返り千秋に声をかけた。
「ーーー君はスタッフや利用客がこちらのエリアに来ないようにして欲しいんだが、できそうかい?解体中に騒がれるのは、少し避けたいんだ。」
彼の言葉を理解した千秋は、コクリと頷くと閲覧エリアへと走っていった。
「ーーーさて、ライトをもう少し左側にずらして貰えますか?」
『....はい』
パチンと導線が切れる音がする度に、心臓が跳ねる。手に汗が滲もうが、それでもライトの明かりが揺れないように精一杯両手で支えた。
「.......怖いかい?」
パチン、パチンと小気味良い音の間に聞こえた声に、彼の横顔を見遣る。解体に集中しているためか視線が合うことはなかったものの、それは明らかに私に向けて発した言葉だった。
『怖いです。......こんな経験、初めてですし。』
「それもそうだね。それじゃ、君のプロとしての初舞台とどっちが怖かったかな....?今をときめく天才バイオリン少女とは、緑川さん.......君のことだろ?」
ーーーパチン。ハサミの音と同時に肩が跳ねた。
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