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私が意を決して口を開こうとした時、男達のうちの一人が後部席に行ってしまった。それからすぐに、怒鳴り声とコナン君の呻き声が聞こえて振り返る。
男の手には、おそらくコナン君のものだろうイヤホンが握られていた。彼らは、私のことに夢中で後ろは見ていなかったはずだ。どうして後ろの様子が知れたのだろう。
「ーーーちっ、ガキが妙な真似をしやがって。んで、どうなんだ。」
『ーーー確かに、私は緑川Aです。バイオリンを、しています。』
バス内に少しだけ騒めきが走る。一度息をついてから、男達を見上げた。
『−−−でも、杯戸中央病院の院長の方については存じ上げません。世間でどう言われているかは知りませんが、私には父親なんていません。その方は、全くの、赤の他人です。』
自分でも吃驚するくらいの冷たい声だった。
「−−−っち、またあのガキ。ちょっと行ってくる。」
あぁ、ともう一人の男が頷いた。
「ーーーまぁ、良いさ。お前を人質にしたところで今後の計画を変えなきゃならねぇしな。とりあえず、そこに座れ。」
男に一つの空席を銃体で示されたため、黙って従った。
『ーーーハァ』
席について逸る心臓を落ち着かせながら思う、哀ちゃんは大丈夫だろうか。やむを得ないとはいえ後部席に一人、置いてきてしまった。
「ーーーこいつ!!もう我慢ならねぇ!」
その時に聞こえたのがコナン君の呻き声と男の怒鳴り声だったため、心配になり思わず振り返る。丁度、コナン君は前席の男性に庇われているところだった。ここで彼を殺せば計画もうまくいかないんじゃないですか、と必死で言い募る彼はコナン君と顔見知りだという新出先生という方だろうか。
「ーーーおい、やめろ。もし、それに当たったらどうするんだ。」
こちら側にいた男の視線を辿れば、通路側に置かれたスキー板用のバッグ二つ。なんとなく、嫌な予感がして数週間前の図書館の出来事が蘇る。計画といい、あのスキーバッグといい−−−爆弾が置かれている、なんて。
『ーーーいや、まさか。』
頭を振って余計な考えを消し去った。
その時、男の携帯が鳴ったため耳を潜ませる。どうやら彼らの目的の人物は警察との取引の結果、解放されてしまったらしい。電話の主がその人物のようだった。
「ーーーさて、そこの青二才と後ろの風邪を引いた男!前に出ろ。」
彼らの言葉に目を見開く。再び後ろを振り返れば、先程コナン君を助けてくれた男性と、秀一さんが通路に出てきた。
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