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「盗聴器と発信器だ。もう壊したけど、後であのボウズが回収しに来るはずだしな。」
『………え…ボウズってもしかしてコナン君?』
油断も隙もないとぼやく彼に首を傾げたが、返答を聞く前に少しだけ奥へと進み始める。彼に手を引かれた私も当然ながら着いていくが、入り口から遠ざかるにつれて深くなる暗闇に私は彼を見上げた。
「大丈夫。仕返しはもうしたし、少ーし奴にお灸を据えるだけ。」
快斗君は私の背後を気にしながらも、私を安心させようとしてくれたのだろうか。背中に回された掌はゆっくりとさすられている。秀一さんとはまた異なるぬくもりに、少しだけ恥ずかしくなった。
『…快斗…くん?』
それからどのくらい時が過ぎただろうか。
突如として、快斗君は私の身体を静かに離してくれた。
「−−−−なぁ、Aちゃん。チューしても良い?」
ふざけた言葉尻ながら、彼の瞳は真剣味を帯びている。暫く視線を彷徨わせた後に、頬なら…と告げれば、"あいつには充分"だと彼は笑ってくれた。
快斗君の左手が私の腰に回り、右手は私の髪を掬って左耳にかけてくれる。
「…目、閉じれるか?」
頷く。快斗君が顔を近づけてきたため私はゆっくりと瞳を閉じた。一瞬の間の後にシュッという音がしたかと思えば、ぬくもりを頬に感じることもなく私の意識は遠ざかっていった。微かに私自身の声が聞こえたような気がしたのだが、あれは気のせいだったのだろうか。
−−−−−
意識を失ったAを横抱きにすると、快斗は路地裏を抜け出した。
「…Aさん?」
コナンの声が聞こえたため、背後を振り返れば瞳を大きく開いている小学生がいた。彼のその頬は酷く赤くなっている。快斗は不敵な笑みを浮かべると、人差し指を自身の口にあてた。
「ーーーちょっと"激しく"し過ぎたみたいでさ、気を失ってるだけ。年頃の男女にこれ以上の質問は無粋だろ?」
「………っ」
快斗は笑みを浮かべると踝を返した。
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野舞 - リア友がこの作品を見たみたいで、私にいい作品だから見てみてって言われて見てみました!すっごく内容も設定も凄く良かったです! (2020年7月20日 20時) (レス) id: 3982121288 (このIDを非表示/違反報告)
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