▼ ページ5
幼い頃に聴いたあのオルゴールの曲は、一体何という曲だっただろうか。とても素敵な曲だった。
「−−−−−A?」
現実に引き戻された私は、隣に座っていた快斗君をみあげた。ゴールデンウィークのためか、親子連れが多い公園の中で、私達はベンチに座っている。昨日の事件が夢だったかのように、この場所は和かだった。
『ごめん、ぼうっとしてた。』
昨日の今日と、日を開けずに合流した私達。その理由は今日の夕方に会うことになっている安室さんへの対策のためだった。昨日の爆弾事件で有耶無耶になっていたのだけれど、私は"変装を解いて"舞台に立った。幸いにも安室さんに会うことはなかったが、彼があの場所にいたのならばっちり私を視認したことだろう。つまり、快斗君がせっかく誤魔化してくれた諸々が嘘だとバレてしまった可能性が高い。理由が理由なので、安室さんにそれを指摘されたところで正直に伝えれば良いのだけれど、快斗君はマジシャンだ。彼のテクニック(謂わばネタバレ)をどこまで話して良いものか、快斗君と口裏を合わせておこうと思ったのだ。
「あれ?Aお姉さん?」
公園の入り口から駆け寄ってきてくれたのは歩美ちゃんだ。よくよくそちらを見やれば、コナン君を始めとする少年探偵団が勢ぞろいしている。
隣の快斗君からゲッという、カエルが潰れたような声がした。
『昨日ぶりだね、みんな。』
「あー…Aちゃん?俺この後ちょっと用事が−−−−−」
『え?』
快斗君の声が裏返っていた。それから彼が立ち上がったので、私も慌てて立ち上がる。結局、安室さん対策をまだ話せていなかった。
「もしかして、この方はAさんの彼氏さんですか?」
光彦君だ。
「……へぇ。有名人がこんな白昼堂々と逢引だなんて、週刊誌の格好の的ね。」
『光彦君も哀ちゃんも誤解−−−』
服の裾を引っ張られる感覚に下を向けば、コナン君が首を傾げていた。
「それならこのお兄さんは誰?」
私は快斗君を見上げると、彼は深い溜息をついてから一転して不敵な笑みを浮かべる。スリーカウントの後に小さな発砲音が上がれば、快斗君の手にはお菓子の詰め合わせが入った透明な包み紙があらわれた。
「−−−−俺は黒羽快斗っていうんだ、よろしくな。」
歓声が上がった子供達一人一人に彼はそのお菓子を分け与えていく。そしてそれは私の掌にも置かれた。
216人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「降谷零」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
野舞 - リア友がこの作品を見たみたいで、私にいい作品だから見てみてって言われて見てみました!すっごく内容も設定も凄く良かったです! (2020年7月20日 20時) (レス) id: 3982121288 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ