Crying you？ ページ49
＊
死「よ」
『あ、弔くん』
ブンブンと手を振る。きっと、このことが誰かにバレたら大目玉を食らうだろう。
死「体育祭、見てた」
『本当？嬉しいのだわ！どうだった…？』
死「…うん、強かった」
『ええ〜〜』
女の子に言う感想じゃない。
もっと他にないの？と笑う。彼の方がくすくす、と口元に手を持って行って笑うものだから、彼のがよっぽど女の子らしいんじゃないかと思う。
死「嘘、金糸の髪が本当に綺麗だった。一つも変わってなくて、おれ、」
黒いパーカーのフードを深く、深く被り直す。ひび割れた痛々しい唇をきゅ、と真一文字に結んで、下を向いてしまった。
『…泣いてるの " 転孤くん " ？』
死「へ、」
『あ、れ？』
口を抑える。今なんて言った？誰の名前を呼んだ？瀬呂の名前でも、響香の名前でも、ましてやお師匠の名前でもない。でもなぜか懐かしい。どこか悲しい匂いのする名前だ。
『ごめ、っごめんなさい！私、変ね！今日おかしいわ、本当に、ごめんなさいね』
死「ぃゃ、」
とってもとっても小さな声だった。しっかり聞いてないと本当に聞こえないくらい、掠れた、低い声だった。
死「ごめんな、おれ今日もう帰るわ」
『っねえ！』
＊＊
side chenge.
＊＊
『でも貴方、転孤くんなんでしょう』
唐突に呼ばれたその《名》に、肌が粟立つ。ああ、タチの悪い空耳だと、そう思った。
彼女がその名前を知っているハズがないのだ。その名前は、その名前は―――
『お願い、どうか返事をして欲しいのだわ』
泣きそうな声で、しかしはっきりと言葉の輪郭をなぞった。
…何故今になって思い出したんだ。あのまま忘れて仕舞えばよかったのに。俺だけが抱えてれば済んだのに。
死「…全部、思い出したのか、今」
『いいえ、いいえ……あなたと一緒に過ごせた、最後の数ヶ月だけ。ずっと私思い出せなかった、思い出したくなかった。また離ればなれになるの分かってるから』
いつの間にか立ち上がってしまったAの腕を引き、強く抱き寄せる。彼女の頰が濡れていることも、自分の肩が震えていることも、気がついたのは降りだした雨が肩を濡らしはじめた時だった。
《Crying you？…泣いているの？》
―――……「どうか思い出して。」
どれだけ絶望的で、どれほど不可能なことなのか分かっているからこその渇望。
―――……「どうか忘れたままで。」
そう諦めた筈なのに、何処かで願っていたことに、どうしてか酷く目頭が熱くなった。
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冬谷(プロフ) - siriusuさん» こんばんわ！金烏ちゃんの口調について、皆様より度々ご指摘いただいておりましたので、説明させていただきました！よろしければシリーズ４作目、一番したのHOW SHE WAS MADE？をご覧ください♪ (2021年8月19日 23時) (
レス) id: a6a69d3325 (このIDを非表示/違反報告)
siriusu(プロフ) - 〜のだわじゃなくても〜だわ〜ですわでも話の流れで違いがわかると思いますよ！ (2021年8月19日 19時) (レス) id: 13d54f4ebe (このIDを非表示/違反報告)
冬谷(プロフ) - ？さん» こんにちわ！回りのキャラと差が出るようにわざと口癖に特徴をつけています。 (2021年3月24日 8時) (レス) id: a6a69d3325 (このIDを非表示/違反報告)
？ - なんて語尾にだわっ付けてるんですか？違和感が、、、 (2021年3月24日 4時) (レス) id: 0324f0d530 (このIDを非表示/違反報告)
みゃーお(プロフ) - 地味とか言ったら失礼なんだけど地味な瀬呂君好きだから、幼馴染ポジ最高です。とってもおもしろかった！！更新頑張って下さいヽ(*´＾｀)ﾉ (2019年1月4日 8時) (レス) id: c931ecd4cb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：冬谷 | 作成日時：2019年1月2日 23時
