＊ ページ7
＊
芦「てかそーじゃん！みんな怪我酷いんじゃ、」
シン、とロビーが静まる。「あ、やっちった」と三奈が呟くから、私と切島は慌てて訂正する。確かに痛かったし辛かったけど、これは誇りや名誉の為にできた傷であって、自分たちは気にしていないこと。それから、これは自分たちをヒーローたらしめる、覚悟の印であること。
飯「だが金烏くん、その手袋は」
『………ア〜………そう、恥ずかしいくらいボロボロになってしまったから、隠しているのよ』
─────火傷は、他の傷とは違うんだよ。
熱が皮膚を、その奥を焼いてしまうから、ずうっと痕が残る。
リカバリーガールは最後まで気にしてたみたいだけど。別に気にしないけど、みんなに見苦しいものはあんまりみてほしくないから。
でもどうしてか、この怪我は忘れてはならないような気がする。それだけ。
だから特別に頼んで、私の髪の毛の繊維を編み込んだ特殊なグローブを作っていただいた。ちなみにヒーロースーツと同じ素材よ！
『ま、でも今日こうならなかったとしても、遠くない未来のいつかでこうなっていたでしょうね。だからいいのよ、気にしてないわ！』
耳「だからって、そんな」
『《無理しないで》、かしら？……違うわ、全然平気よ！大丈夫、だって』
爆「おい金烏、面貸せや」
『……いいわ』
どうせ強制させるくせに、よく言うわね、なんて思ったけど黙ってついていってやる。
嫌味言われるのかなあ、とか何かくれるのかなあ、とか。出来ればごはん食べたいな、なんて不純なこと考えたけど、この男のことだから、きっと私の状態見て終わりだ、まだ責任感じてるのね、聡いのに馬鹿な男。
爆「…………いいんか、それで」
『何が？手のこと？それとも………私が思い出せないことを、あなたは知ってるって言うの？』
爆「…………忘れたって、テメェ正気かよ」
『嫌味？思い出せないのよ、でもきっとこれでいいんだわ、そう思っているしそう願っているし、そう信じてる……………あら、爆豪、あなたそんな顔できたのね』
爆「…………るせェ」
私なんかよりずっと痛そうな顔しちゃって、それで私のこと分かったつもり？……違うのよね、あなたってばそんな顔して優しいから、泣きたくても泣き出せない私の代わりにそんな顔してくれるのよね。だから私もそうして、曖昧な顔して笑ってやるしかできなかったのよ。
《Daybreak comes……夜明けは来たり》
どんな大言壮語を並べても、その愛には尚遠い。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 37人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：冬谷 | 作成日時：2020年6月29日 21時
