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どうしてそんなに泣いているの？泣きたいのは私なのだわ、もうとっくに泣いてるけど。いやね、厭になるくらい現実的な夢ね。どうして、なんて、説明できたらどれだけ楽だっただろう。でもそれってきっと幸せかしら、幸せだったんだわ。どうしようもないくらい貴方のことを、無意識のなかに求めて、焦がれて、苦しくって、それでも愛しくて、そういう気持ちが溢れてしまって泣いていたのね。
「怒ってねえよ、怒ってない。その代わり、俺はもう止まらない。だからこれはお別れなんだ、許してもらうのは俺なんだ。
愛してる、ごめんな、愛してしまって、きっと何回伝えても足りないし、言葉にすればするほど薄っぺらくなる。
変だな、おれ、なんか、息苦しくて、熱くて、苦しいのに、笑っちゃうくらい泣きそうだ」
一度するりと腕を抜く。それから私の頬を、いとおしそうに、やさしくその両手で包みこんで、私のうすい唇めがけてキスをした。
「…最低で、ごめん」
ずるい人、そんな顔で無理矢理笑われたら、私、だんまりになるしかないじゃない。分かってるくせに、意気地無し。
とまってくれはしない私の涙を戸惑うように、やさしく、やさしく拭って、私を笑顔に変えてしまう。ずるくて嫌になる。それでもこんなに温かくて、幸せで、夢だと言うのなら覚めなければいいのに。そう願ってしまわずには、いられない。
「A、さよならだ。もう俺たちは、次目覚めたときにはお互いのことを忘れてしまっているから、きっと敵と正義の味方とで、そうあれるはずなんだ、そう願ったんだ。これが俺の愛で、これがきっと正しいに違いないんだ。
もしお前が俺を2度裏切ったことに許しを求めているなら、これでおあいこにしよう。だから………」
『……ねえ、私、転孤くんの、こと、永遠に愛するって、誓うわ、』
「俺も、何時、だ、って、何回だって、Aのこと好きになるって、愛するって誓う」
下手くそな作り笑いで、そんなので私が笑うとでも思っているの？なんて。バカにしてみようかと思ったけど、その笑顔があんまり下手くそで、泣いていて、苦しかったから、私は、何も言えなかった。
「A、」
電車が音もなく止まる。
『ねえ、転孤くん』
次の瞬きの間に彼は影形もなく消えてしまっていたから、私はもう、一人で声をあげて泣いてしまうしかなかったのだ。
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作者名：冬谷 | 作成日時：2020年6月29日 21時
