【ヒロアカ】To my dearest. Ⅳ (ページ1)

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Daybreak comes ページ1

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はた、と、自分が微睡んでいたことに気がつく。しぱしぱと目を何回か瞬かせて、それでも覚めきらない意識に少し嫌気がさす。がたごと、がた、ごとん。誰もいない電車のなか、私どうしてこんなところにいるんだろう。何処に行こうにも、私は何もないはずなのに。

なんとなく窓の外を見やる。何もない。何もない、のに─────…………

ふっと車内に暗闇が満ちて、何も見えなくなる。息を呑むくらい一瞬、すぐに明るくなって、眩しさに堪えられずに目を細める。それなのに私に影が落ちて、なんとなく人だと思ったから、私はゆっくり正面を見る。

黒霧「こんにちわ」

『あら、こんにちわ』

沈黙。依然として走り続ける電車の音、揺れる影。何もかもが現実のようで、だけどこの状況はきっと夢で。

「………驚いていますか？」

『少しね、そう…………でも少しだけよ、これは夢なんだから、だれが出てきても不思議じゃ、ないけど─────…』

「そうですね、そう……………夢、ですから。『あの人』とあなたの、共通の。」

『ふうん、でもごめんなさいね、なんだか眠くてあまりよく分からないの』

どうしてこの人なんだろう。瀬呂は？響香は？師匠は？夢なのに、どうしてここには、私だけなの？「あの人」って、誰？なんだか頭に霞がかかったようで思い出せない。でも、でもそう、すごく、大切な───…………なにか、だれか。

不安で心が湿ってしまう。こわい、怖い。忘れてしまったの？思い出せないの？それとも、何も知らないの？

「彼が待っています。短気なのはあなたが一番よく知っているはずですが。…………まだ、思い出せていないなんて、言いませんよね」

『…………どうして、わかるの？』

「認識の世界ですから。ここはあなたの夢、あなたの考えていることそのものが反映される。だからあなたの思考は全て筒抜けと言ってもいい、だから────……もし、あなたが本当に彼を思い出せないままなら、ずっと此処に居なければ。」

『ええ？！そ、そんな、それは困るのだわ、だって私目覚めないと……………』

目覚めないと、何？目覚めたさきに何があるの？思い出そうとして手のひらを見る。擦り潰れた肉刺のあと、醜い火傷のあと、それから…………なに？いつも大切なことは手のひらに油性のペンでメモした。その名残かな。わからない、でも私は確かに、目覚めなきゃいけない、そんな強い使命感を持っている。