黄緑担当は僕です！【男主】 (ページ10)

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加入までのカウントダウン⑦ ページ10

阿部サイド

学業とアイドル活動の両立は中々大変なもので、俺は夜遅くまで練習室でよく自主練をしていた

アクロバット、振り付け、楽器の復習

何度も何度も繰り返し、終わりがないように踊り狂ってる俺の近くには必ず、唯がいた

両親共に舞台に携わる仕事に就いているだけあって、唯は加入当初から舞台に対するプロ意識は人一倍強かった

『手を抜いては、舞台の神様から天罰が下る』

なんて純粋に信じ続けて、真剣に舞台と向き合った唯は、周りからも、大人からも、一目置かれる存在だった

当の本人は、その熱い視線に無関心のまま、流されず、自分の演者としてのありたい姿を貫こうとしていた

あの、熱中する姿に、俺は純粋に凄いと感心した

…と同時に、危なっかしさを感じた

多分、ジャニーさんも同じ気持ちだったのかもしれない

ある舞台に俺も唯も参加していた時、大声で泣きわめいて、悲しみに暮れる大事なシーンを唯は任された

劇中の主要人物の死

それと向き合わなければならない少年役だった

唯は、その役を器用にこなし、たくさんの人に実力を認めてもらっていて、安定した演技も監督に定評で、大人の唯への期待も高まっていた

しかし、ある昼公演、唯の様子が少しおかしくなった。

大事なシーンを終えて、舞台裏にはけても、不安定な呼吸も涙も止めれずにいたのだ

調子でも悪くなったのか？何か嫌なことを思い出してしまったのか？丁度袖にいた俺は、あたふたしながら唯に近づいてみるも、声は届かなかった

スタッフさんにお願いして、楽屋に運んでもらうことを頼もうとしたその時、見学していたジャニーさんが走ってやってきて、思いっきり唯を抱きしめた

「役に憑依して抜け出せていないだけだ。心配をするな」

小さな唯を両腕で抱きかかえながらジャニーさんは俺に言って、

「唯。ほら、このストーリーの中にYOUはいないだろう？早く戻ってこい、ほら」

と、なだめるように震える唯の背中に円を書きながら、ジャニーさんが強く話しかけるのだった

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