黄緑担当は僕です！【男主】 (ページ3)

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現場の奥まで入っていく倉持は、カメラに特に話しかけることもなく、スタスタと歩き進めた

俺はただ彼の横顔をじっくりと撮る。

自然と目に入ってくるのは、彼のきめ細かい白い肌とふわりと微笑みを浮かばせるぷくっとした唇だ

ちょっと猫背なとこや、もさっとした重たい前髪でインパクトに掻き消されてるのが残念だ。

シンプルに、綺麗なのに

こんな倉持の「ギャップ」を俺は捉えるべきなのか…？まだ彼の印象をイマイチ掴めずにいる俺は、そんな考えを巡らせていると、

『スミマセン… ちょっと、遠回りします』

ずっと無言で微笑んでいた倉持が、ピタリと止まって俺にそう伝える

そして、たどり着くのは、サウンドのブース。

『おはようございます！』

倉持は、ひらひらと手を振りながら入っていくと、中にいた音響スタッフたちは仕事を止めて、ブース中に温かい言葉が飛び交う

「お！！主演に抜擢された唯じゃねーか！」

「お前、もう、舞台側の人間になったらしいな！」

「おめでとうな！」

「そして、今年もこっちをよろしくな」

愛にあふれた表情で倉持を茶化したり、褒めたりするスタッフたち。それを恥ずかしそうに受け止め、耳を赤く染める倉持の様子は今日初めて年相応のものだと思えた。

「こいつ、表側の人間なはずのに、４年以上も我々と裏で頑張ってきた大切な仲間なんだ。いっぱい映してやってくれ！」
一人の年配の男性スタッフは俺の肩をバシバシ叩きながらそう言う。

そしてその隙に、倉持はカメラに説明もせず、黙々と雑巾を絞り、1階客席のアームレストや手すりを拭き始める

カメラを構えた、俺が映そうとすると、倉持はしゃべりだす。

『滝沢歌舞伎の裏方。これが僕の…忘れてはならない原点なんです』

そう言い残して、彼は何かに吹っ切れたように涼しく笑った。

真っすぐな目をしていて、穏やかに微笑んでいることが印象的で、どこか影を抱えてそうなこの少年。

彼がどんな重圧やプレッシャーと闘ってきたのかは、俺はまだ知らない。