【文スト】salvation of a saint Ⅱ (ページ27)

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ウィル・オブ・タイクーンページ27

あるビル

眼鏡を掛けた小柄な女性が廊下をそわそわと動いていた

「(息を吸って喋る……息を吸って喋る……リラックス大丈夫……)」

「何かお困りですか？」

従業員に声を掛けられ驚く女性

身振り手振りで伝えようとするが伝わらず従業員は去った

「(びっくりした……知らない人に話しかけられちゃった……)」

扉の前へ行くと中から声がした

「いい加減早く入りたまえ」

「し失礼……しまっすっ……」

中ではフィッツジェラルドが不機嫌そうに音楽を聴いていた

「また作戦書かねオルコット君」

「あの……えと……はい」

『組合』従弟ルイーザ・メイ・オルコット能力名『若草物語』

「情報分析も速筆も君の美点だがその大長編はどうにかならんのか？昨日届いた分がまだこんなに残っているぞ？」

バラバラと報告書を捲るフィッツジェラルド

「えええと……す済みません……で…出直します」

赤面をしながら答えるオルコット

フィッツジェラルドは立ち上がり報告書を受け取る

「移動中に読む次の作戦は？」

「え……？き危険です拠点の客船が落ちた今フィッツジェラルド様には屋内で大人しくして頂かないと…」

足を止め振り返るフィッツジェラルド

「俺がいる場所が組合の拠点だ違うか？」

探偵社

敦は階段を登りある部屋の扉を開けた

「おや」

部屋では紅葉が本を読んでいた

「珍しいの童そなた一人かえ」

扉を閉める敦

「ゆるりと寛いでゆけ見ての通り幽閉の身ゆえ茶菓子も出せんがの」

「幽閉？……鍵もない部屋で？」

ガチャガチャと把手を廻す敦

「鍵なら此処じゃ太宰の掛ける鍵は目に見えんでのう」

トントンと頭を指す紅葉

"紅葉姐さんは当面は無害だよ"

「で？何用じゃ童私を消しに来たか？あるいは不手際を為出かして前線から逃げてきたかのう？」

紅葉の言葉に動揺する敦

「何じゃ図星か」

「違う僕は…僕はただ皆を守ろうと……」

敦の脳裏には怯える春野ナオミの姿が残っていた

「ふん……太宰は面倒な教え子ばかり受持つのう忘れろ忘れろ貴様如き竪子の所業端から誰も期待しておらぬわそれより善いのか？」

お茶を飲む紅葉

「太宰の傍に居らんでも戦争中じゃろう？」

「……太宰さんは交渉に向った」

ー政府の代理人とー