【文スト】salvation of a saint Ⅱ (ページ26)

今日:5 hit、昨日:0 hit、合計:37,288 hit

過去と憐れみと言葉ページ26

「それはおめでとう」

ゾクッ

Aは太宰の表情を見て身震いをした

太宰の瞳には光が無かった

「僕を閉じ込めたお礼にいっぱい苦しめて壊してあげるね」

笑顔を向け話す久作

「善く憶えているよ君ひとり封印する為に大勢死んだ」

久作の方へと躰を向ける太宰

「けど次は封印などしない」

ー心臓を刳り貫くー

「久作君…」

久作は一瞬Aの方を見た

その瞳は悲しみで溢れているように見えた

だがすぐに視線を太宰へと向けた

「ふふふまた遊ぼうね太宰さん☆」

列車の扉が閉まり発車してしまった

"闘争を征する為ならばマフィアは手段を選びません"

樋口の言葉が太宰の脳裏に響く

「私も策の清濁に拘ってる場合では無い ……か」

「行くよ敦君」

蹲る敦に声をかける太宰

「立つんだ」

「駄目だ……」

敦の声が響く

「僕は駄目だ……僕は居ちゃいけなかったんだ……」

泣き叫ぶ敦

「敦君」

太宰は敦の名を呼び

パン

構内に響く乾いた音

頬を叩かれた敦は驚く

「君から過去を取り上げる権利は私にはないだが偶には先輩らしい助言でもしよう」

ー自分を憐れむな自分を憐れめば人生は終わりなき悪夢だよー

ツー…

Aの頬に一筋の涙が伝った

「さあそろそろ反撃といこうこちらも手札を切るよ」

敦がナオミ Aを起こそうと駆け寄る

「三百ある中で一番刳い鬼札をね」

ニッと振り返る太宰

「この戦争に政府機関を引き摺り込む」

"自分を憐れむな自分を憐めば人生は終わりなき悪夢だよ"

太宰の言葉が延々とAの脳内に響く

どんなに悔やんでも泣き叫んでも戻ってこない

"逝かないで！私を一人にしないで！！"

"お前なら…大丈夫だ"

"無理無理だよお願い…逝かないで…"

"Aなら大丈夫だ"

"何で… 確信なんて無いでしょ？"

"そうだな俺がただお前を信じてるだけだからな"

"信じて…？"

"ああもう行けA"

"……"

"A ー…"

貴方の言葉太宰さんの言葉

この胸に焼き付け生きましょう