支え ページ34
「一織さんっ」
一織くんが電話を切った直後、小鳥遊さんが、先程私が通り過ぎた部屋の一つから飛び出してきた
「マネージャー」
一織くんが、小鳥遊さんを呼んでくれたらしい
「体調が優れないと聞きました。他に、誰か一緒に来ている方はいらっしゃいますか？」
小鳥遊さんの優しい声に、私は首を振った
「すぐ治る、ので…」
カオルさんにも、天にも、なるべく心配をかけたくない
さっさと戻って、何事もなかったように振る舞うのが理想だった
だが、それは無理そうだ
「それでも、このまま放って置くわけにはいきません」
小鳥遊さんが、自身のカーディガンを私にかけてくれた
「あ、の…」
「…とりあえず、化粧室行きましょうか」
言おうとしたことを読み取ったのか、私の体調を見抜いてか、小鳥遊さんがそう提案してくれた
小鳥遊さんに支えられながら、よろよろと化粧室へ進む
「ありがとう、ございます…」
「いえ、それより、顔色が…大丈夫ですか？」
小鳥遊さんの顔に心配の色が見えた
「あ、の、吐く、ので…出た方が、いいかも…」
途切れ途切れにいうと、小鳥遊さんは少し戸惑ったように化粧室から出て行った
「…っうぇ…」
洋式の便器に縋り付くようにして、胃の中の不快感を吐き出した
気持ち悪い
ツンとした匂いが鼻腔を刺激した
水を流しても、吐き気はおさまらず、ついには出すものもなくなって、酸っぱい味が口に広がった
涙で視界がにじむ
乱れた呼吸をそのままに、ぼうっと流れる水を見つめた
小鳥遊さんが出て行ってくれて、よかった
こんな情けないところ、流石に見せられない
「Aさん」
突然名前を呼ばれ、驚いて振り返る
「なんで…」
小鳥遊さんが、立っていた
「お水持って来ました。大丈夫ですか？」
尋ねられるまま小さく頷くと、小鳥遊さんは私を支えながら近くのベンチまで移動した
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 307人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ゆきな(プロフ) - とっても面白かったです！続きがとても気になります (2019年12月28日 3時) (
レス) id: 0b67114e74 (このIDを非表示/違反報告)
咲夜架(プロフ) - Sora君さん» コメントありがとうございます！ずっとお話を溜めていたので、コメントが励みになります。これからもよろしくお願いいたします！ (2017年3月19日 21時) (レス) id: 3417dbbffc (このIDを非表示/違反報告)
Sora君(プロフ) - お話すごく面白いです!!更新がんばってください!! (2017年3月19日 20時) (レス) id: 4ea93103b2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：碧 | 作成日時：2017年3月18日 13時
