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「いや、ちゃうねん。ちゃうねん、まじで。」
何かは答えず謎の訂正を入れながら、
片手で頭を抱え、もう一方の手で手招きで家の中へ入るよう促される。
僅かに眉をひそめながらも誘われるままに家の中へ入り
お邪魔しますと一言添えてブーツのジッパーに手をかけた。
その時、ショッピの口から
「それや。」
と前後になんの言葉もなく指示語が飛び出した。
『はん?』
女っ気のない気だるげな低い声が短く零れ落ちる。
少し前かがみで足元に手を添えていたせいで下から覗き込む形になるが彼の方を見やった。
彼の方を見つめた視線は彼とは交わらず、彼の視線は私の足元へ向かっていた。
なに?足?靴??
『人の生足見て頭抱えんな。失礼な。 歳か、歳のことが言いてぇのか。』
「実年齢考えればそれなりの気合い感じるけど見た目的にそっちはセーフ」
『じゃ、なんやねん。』
「靴や靴。そのブーツ。」
脱ぎ去ったブーツを後ろ手に指さしながらリビングの方に通される。
釣られて自分も、つい今しがたまで履いていたそれをチラ見したけれど“ただのブーツ”である。
買ってからそう日が経っていないから綺麗だし
踵もすり減っていないし
頭を抱えられるような話で思い当たるのは
『誰かのと被っとる?』くらいなものなのだが
尋ねられた相手は
「ちげーわ」と返すだけだ。
「…直に言うとフツーに失礼かもしんないけど
お前…、天野さん来るのにそのヒールはマジか、と。」
『…あ、』
「いや、好きなの履いたらええんやけど。
今日、日向が“智哉”以外の誰よりもデカイな。…て。」
『……アッふぅーん…??なるほどな??(察し)』
元より、私が身長高いこと自体を気にしていないのを知っているが
それでも「好きなものを選んでいい」という…
好きな格好を否定するつもりは無かったからこそ言い淀んだのかもしれない。
たしかに…あのブーツ、ヒールそこそこの高さあるよな。
“チーノ”…智哉くん除いて、靴を履かずとも身長変わらんのに
あれ履いたら先輩は言わずもがな、塩戸とシャオ…沙織さんも私より低いだろう。
『えー…じゃあ塩戸のスニーカー貸してや』
「嫌やけど?…言っといてアレやけど気にしなくてええんちゃう?」
『ほんまに“言っといて”やな。』
「ごめんて、思ったよりデカかったんや。」
『……たしかに。』
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『え、靴履き替えてこようかな、どうせ大センセすぐ来やんやろ』
「ええから、まじで。大人しくしてて」
『言い方ぁ…』
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作者名:睡-スイ- | 作者ホームページ:https://twitter.com/sleep_d_urtk?s=09
作成日時:2024年1月3日 16時