Valentine night（K.Ryohei） ページ30
夜２１時３０分
中村たちと別れたAは良平君のアパートまで来た。
「ここかな。確か２０３だったわね」
いちばん端の２０３。木村と書かれた表札がある。
「ここだわ」
２回チャイムを鳴らしたが出てこなかった。
ドアノブを回しても当然開かない。
「開かない…か。飲みに行ってるのかな。
どっちにしろ帰ってくるまで待っておこう」
Aは良平君の家の前で待つことにした。
しかし良平君は２３時を過ぎても帰ってこなかった
「へっくちっ…あ〜…さすがに寒い…っ
でも０時まで粘ろう」
＊＊＊
２３時
「はあ〜やっと終わった！！」
「お疲れ様〜良平君っ！良く頑張ったよぉ〜！」
「しおりさんありがとー！」
ゲームの収録がやっと終わった良平君は喜ぶ。
「明日はオフだね良平君！
これから私と飲みに行かない？」
「あーごめんね、今日はもう帰る。疲れたから
家で飲むよ」
「じゃあ私も行っていい？」
遠野は良平君の家に行くという。
「ごめんそれはちょっと…遠慮させてもらう」
「え〜どうして？」
「どうしても。女性はだーめ」
彼は断った
良平君はタクシーでAの家に向かった。どうしてもチョコレートをもらいたかったから。
「Aさん！いる？」
チャイムを鳴らしても返事がない。
「いないの？寝てるの？」
ドアは鍵が掛かっていた。
「いないのかな…いる気配がしない。
くそ、携帯があったらよかった…せっかく貰えると
思ったのに。柿原はもらったんだろうな…
ほんとツイてない。Aさんに会いたい…」
仕方なく帰ることにした。ただいまの時刻は２３時４０分。
良平君は家の近くのコンビニで酒を買った。
「明日はオフだし、やけ飲みしよう……」
２３時５０分───
Aは体育座りして顔を伏せていた。
「あと１０分しても来なかったら、帰ろう…
へ……へっくち！」
彼がカン、カンと階段をあがる途中…
「へ……へっくち！」
「え？」
上から先程のくしゃみが聞こえた良平君は急いであがった。
「え…Aさん…？」
「へっくち！…良平くん…っ」
「なんで……なんでここに」
「携帯繋がらないから…
下野から良平くんの家聞いてね、
ずっと待ってたの。渡すって約束したもんね」
Aは笑った。
「Aさん……っ」
ガシャン！
ぎゅうぅ…
「り、良平くん…？」
良平君は大量に買ったお酒の袋を地面に落とし、
Aを抱きしめた。
一本の缶ビールは階段から転げていってしまった。
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作者名：touko.
| 作成日時：2019年8月17日 18時
