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「聞こえてる〜?」
「んー、楽しかった?」
「うん〜あのねぇ、お酒あんまり飲まなかったんだよ〜えらい?」
「偉い偉い」
友だちと飲みに行くというAに、店まで迎えに行こうかと聞いたら、駅に近いところで飲むから駅まで電話しようとのことで、その後は俺の家の最寄りで降りるから迎えに来て、なんてお願いされたのだった。
あまり飲まなかったと言うわりにはふわふわしていて、たまに聞こえてくる鼻歌に随分と気分が良さそうだな、なんて。
お店の何が美味しかっただとか、このお酒が美味しかっただとか、楽しそうに話しているんだろうなと、声色でAの様子を思い浮かべて少し口角が上がってしまったけど、まあ俺一人だしいいかな。
「電車乗ったら言ってよ?分かってる?」
「うん〜」
「Aが乗ったらオッパ家出るから、いい?」
「はーい」
本当に聞いてるんだか聞いてないんだか、ふんわりとした返事だけされたけど、まあ多分、分かるだろうし……
会話をしていたらいきなりガコン!なんて音がして驚けば、けらけらと笑って「ごめん〜」なんて言ってくるのだから後で会ったらでこぴんでもしておこうかと思う。
「何買ったの?」
「おみず」
「気をつけなよ、溢さないようにね?」
「大丈夫だってば〜」
大丈夫、なんて言ったあとすぐ「わ!」なんて声と一緒に電話が切れてしまって。
かけ直してみたけど繋がらなくて、とりあえずAのいた駅から検索をかけてみれば、ちょうど電車が来ていたから仕方ないな、と家を出て駅に向かったのだった。
「あ!おっぱ〜!」
俺を見つけた途端少しだけ早歩きでこっちに来るAに呆れつつも、駆け寄ってくるのがかわいくてすぐに許してしまう自分がいて、自分自身にも呆れてしまう。
合流して、いつもなら手を繋いでくるのに、今日は珍しく腕を組んできたAにどうしたの、なんて声をかけてしまった。
「はやく会いたかったの。こっちの方がくっついてられるでしょ?」
「……そ」
「うれしいんだ?」
「別に〜」
俺の顔を覗き込むみたいに「照れたんでしょ」なんて言ってくるから転けそうになって、ちゃんと歩きな、と言えば面白そうに、横目でニヤニヤと俺の方を見ているから何だかいたたまれない。
「てか突然電話切るのやめなね。その後繋がらないし。なんかあったかと思うからやめて」
「ごめんなさーい」
「A?」
「分かったってば〜」
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さまゆゆ(プロフ) - 完結お疲れ様+おめでとうございます!あまーい入野を本当にありがとうございました!! (12月12日 23時) (レス) @page20 id: f43423a96b (このIDを非表示/違反報告)
elmo(プロフ) - Twitterしたくなくて見れないから、、、いつかここでさくらんぼさんの作品大好きなので読める日を待っています😆✨ (12月6日 18時) (レス) @page20 id: fe6e18ad7e (このIDを非表示/違反報告)
にこ(プロフ) - さくらんぼさん» 新作もし書かれるようであればまた拝読させていただきます! (6月17日 1時) (レス) id: d0206497b3 (このIDを非表示/違反報告)
さくらんぼ(プロフ) - にこさん» ありがとうございます!そう言っていただけて嬉しいです〜🫶🏻最後までお付き合いありがとうございました❣️ (6月16日 19時) (レス) id: 208005c528 (このIDを非表示/違反報告)
にこ(プロフ) - 完結おめでとうございます!とっても面白かったです! (6月15日 21時) (レス) @page19 id: d0206497b3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さくらんぼ | 作成日時:2023年4月4日 0時