酒に酔っても酔われるな

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「わー……おいしそう……」

「お、Aちゃん肉好き？」

「人並みには……？」

「なんで疑問形？」



おすすめの店がある、なんて先輩に言われて連れてこられたのはステーキのお店で。大学生にはぴったりなお手頃価格のお店。

店員さんに寄って運ばれたステーキはじゅうと音を立てていい匂いをさせている。



「いただきます」

「召し上がれ〜」

「……おいしい！です！」

「おー、それは良かった」



今日一日一緒に過ごして分かったことはかっこいいことには変わりないけれどちょっとかわいらしいところがあるということ。

このお店に来るまでに野良猫を見つけた時、追いかけはしなかったもののずっと目線が野良猫に向いていたり、とにかく自分の飼ってる猫の名前と写真を私に見せてきて「俺の弟なんだ」と熱弁したり。

私が思っていたよりも猫が好きみたいでそこがなんか、かわいい、かもしれない。



「そういえば先輩って四年でしたよね、就活とか終わったんですか？」

「まぁ、じゃなきゃ合コンなんて行かないしね」

「……たしかに」



今も就職先が決まってなかったらこんなことしてないか、なんて自分のちょっと考えれば分かるような質問に恥ずかしくなった。

そんな私を見て、くすくすとまた笑う先輩にちょっと睨んでみても全く効果はなかった。



「Aちゃんは？バイトとかしてるの」

「週に三回くらい、ですかね」

「結構やってんだね」

「大学生もお金かかりますからねえ……」

「まあ、確かに」



そんなやり取りをして二人して笑い合う。

なんだか、こんな風に会うのも結構楽しいかも、なんて思ったのだった。



「今日はありがとね」

「あの、本当にお礼になりましたか？」

「……じゃあ、あと一つだけ、いい？」

「いい、ですけど……」

「また……また、こうやって一緒に出かけてほしいんだけどダメ、かな」



少し恥ずかしそうに自分の頭をさわって私にそう聞いてくる先輩に驚いた。だって、ずっとあんなに強気というかサラッと女の子にかわいいと言ってしまうような人なのにここで照れるんだ、なんて。耳が真っ赤になっている。

最初こそちょっと憂鬱だったけど、まあ、先輩となら、なんて思ってしまって。



「じゃあ今度は先輩が空いてる日、教えてください」

「え、マジで……？」

「マジです」

「じゃあ……今週末、とか」

「あ、バイトの日だ……ランチ、とかどうですか？」

「じゃあ、それで」



こうして、私たちは次の約束をしたのだった。

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