酒に酔っても酔われるな

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「昨日さ、Aがもうちょっと一緒にいたいって、言ってくれたでしょ？」

「う、はい……」

「なんかめちゃくちゃ嬉しくてさ……あ〜好きだな〜って、思って」



胡座をかいて座る俺の膝の上に座って跨っているAの髪に手をかけて、そのまま耳にかける。恥ずかしいのかそのかわいらしい耳も真っ赤に染っていた。

片手を添えている細い腰に少しのいたずらのつもりでくすぐってみれば、怖くもない目で睨んでくるからそれがまたかわいくて。



「誕生日、一緒にいてくれてありがとうね」

「それは私のセリフ、というか……やっぱり、好きな人の誕生日、なので……」

「Aの誕生日もお祝いしなきゃね」

「当分先じゃないですか」



春生まれのAの誕生日にはどこかお花見に行って、デートをするのもありだな、なんてまだ数ヶ月も先のことを考えて勝手に一人楽しくなっていれば「にやにやしないで」と言われてしまって。

初めて会ったときよりも崩れた敬語とか、眠そうな表情とか、酔ってるときの気の張っていない感じとか、かなり気を許してもらえるようになったな、と改めて思う。



「Aからちゅうしてみて」

「えっ……」

「ね、さっきしたいことしていいって言った」



少し照れているAに向かって「ん〜」なんて唇を出して見れば「目つむってて」とその小さな手で瞼を閉じられてしまって。

肩にぎゅっと力を入れて服を掴まれたあと、言われた通りに大人しく待っていれば本当に触れるだけのキスを一度だけしてくれたのだった。



「あ……！見ないでって言ったのに……！」

「顔みたいじゃん」

「オッパの嘘つき」

「ごめんってば」

「思ってもないくせに……」



首元に腕を回してぎゅっと抱きしめてくるAに俺も抱きしめ返して「こっちおいで」と今度は横側に呼んでそのまま横になった。



「寝るんですか？」

「だらだらしようって言ったでしょ」



そう言ってセミダブルの二人にしては少し狭いベッドに横になって布団を被った。

スマホを取りだして適当に動物の動画やら、ドラマやらを見ていればうつらうつらしているAを見て無意識に頭を撫でてしまう。


次に起きた時に「起きてたかったのに……」とちょっとふてくされるAをなぐさめたのだった。

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