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見慣れた細い一本道。




ここを抜けると、今私が住んでいる

赤い屋根の古びたアパートが姿を現す。






外見は、お世辞にも綺麗とは言えないけど

中は結構お洒落で、何より家賃が断トツで安い。





住んでみると思ったより居心地が良いし、

お風呂もトイレもついててこの値段だから

我ながらいい物件を選んだと思う。









それに今の季節は、

近所の公園に咲く桜がよく見える。






毎年、綺麗なピンク色に色づいて

咲いている間はもちろん、

枯れ落ちるその瞬間までも美しい桜。






儚くも力強く、

周りの人々を魅了し引き付ける。









まるで彼の様に。









.









__4月






昨年よりも遅咲きの桜が

やっと少しづつ色づき始めた頃。






塗装の剥がれかけている階段をゆっくりと上り

部屋の鍵を出そうと鞄に手をかけた時、

ふと、1つの人影があることに気づいた。








...えっ、誰かいる!?





私の部屋、205号室のドア手前で

全身真っ黒の服に身を包み、

マスク、帽子までつけてる如何にも怪しい男の人。





体操座りで、膝と膝の間に顔を埋めるようにして座っているから

顔は1mmも見ることが出来ない。






会社終わりのもう遅い時間、

電池がないのか、時折点滅する蛍光灯が

より一層怖さを感じさせる。









...なんでピンポイントで私の部屋の前なんだよっ!


せめてもう一つ向こうの部屋に行けよ!!







寒さからなのか、仕事の疲れが出てきたのか、

沸々と込み上げてくる怒り。





自分の中で何かが切れるように、怒りが恐怖を追い越すと

気が付けば自ら、声をかけてしまっていた。









『もしもし、お兄さーん』


「...うぅ」


『こんな所で寝てたら風邪引きますよ』


「すみませ...お、お腹空いて...動けなくて」





そう言うと、一瞬起こした頭を

再び膝の間に埋めてしまう。





「お腹が空いて動けない」 って、

このまま放っておいたら、もしかして死んじゃうかな...





っていうか、よく考えたら

この人どうにかしない限り、私一生家の中入れないよね?








『...お兄さん、お兄さん立てますか?』




このまま野宿するわけにもいかないし

この人に家の前で死なれても困る。







それに、


それに、ほんの一瞬だけあった彼の目は

まだ少し光を帯びてて、

こんなの理由にならないだろうけど

きっとこの人は悪い人じゃないって思った。







いや、思っちゃったんだ。

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作者名:ぴーよ | 作成日時:2021年3月13日 16時

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