私と貴方と霊な貴方【ゴールデンカムイ（尾形）】日常編

35　目覚め ページ35

「百！」

百の名を呼び 私は飛び起きた

目の前には

「Aっ！！」

「Aちゃん！」

「！」

すぐに誰かに抱き着かれた

「起きた！ ・・っ！ Aっ・・ AA！！」

何度も抱きしめられた人に名前を呼ばれた

百と同じ・・・声

でも


「尾形さん 百は？？！ 百はどこっ！？」

周りを見ると どうやら私は自分のベッドの上で寝ている風だった

白石さんが 状況を説明してくれる
私が玄関で倒れた後、尾形さんがすぐさま病院へ担ぎ込もうとしたらしいのだが
何故か私の体は この家から出られなかったらしい

まるで何かに引き付けられるかのように 私の体はホラーさながら
私の部屋へと飛んで行ったかと思うと さっきまで自分たちは部屋にすら
入れない状態だったとか・・・

　(うん、ホラー)

きっと百の仕業だろうと私は解釈する
部屋の外を見ると ちらばった机の破片らしきものや タンスが倒れたりと
「何か」があったことが うかがえた

しかし 今の私にはそれすらも どうでもいい事だった

百の・・・ 気配が全く感じない


　 百は・・・ 百はドコ？！！


私を押した百の瞳は 今まで見たことがないほどに悲しく・・・寂しげだった

「百！ 百っ！！」

何度も 百の名前を呼ぶ

目から涙が自然とあふれる
狂ったように百の名を呼ぶ私に 白石さんたちまでもが 動揺しだす

私は小さな子供のようにわんわん泣いた
自分でも よくわからない
感情が うまくコントロールできない


　今まで一緒だった

　「消えろ」と言っても 消えなかったくせに・・・


　心のどこかで 百は絶対 自分から離れないと思っていた

　だって あいつは いつも・・・


　 (そばに・・・来た)


　 −− こんな別れ方・・・ イヤだ！！


自分勝手だろうが かまわない

百に今まで何度 「消えて」と叫んだかも どうでもいい


　望んでいたくせに・・・ 私はなんて身勝手な人間なのか


今まで当たり前のように一緒にいた存在が急に消えた虚無感に 私はひどく混乱していた


　 本当に・・・ いなくなったの 百？

　 (成仏したの？)


最後の百は 闇に飲まれたふうだった

「百・・・ 大丈夫なの？！」

百は幽霊だ

あの闇は何？


今までだって時々百の周りに 黒い霧のようなものが見えることはあった
百が怒っていたり 不安に思っているときに その光景はよく見れた


だけど百のすべてを飲み込むような あんな闇は初めてだった

36→←34（百視点）

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す