輪 (ページ1)

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朝香さんの場合ページ1

朝香は今夜の食事会の相手についてとても緊張していた。朝海ひかるが同席するというのだ。
「これは、確定ということでいいの？」
思わず夫に相談してしまった。
「相手が47歳、坂本君が48歳、真剣なお付き合いだと思う」
あんなに子供好きなのに、自分の子供は望まないんだなというのが最初に考えたことだ。次に、添い遂げるんだなと坂本の覚悟を感じ取った。
「あのね、坂本君は坂本君で、緊張していると思うんだけど、朝海さんは朝海さんでこっちの妻達に緊張していると思うからさ、気にしてあげてね」
「それは、もちろん」
宮﨑あおいに宮沢りえ、白石美帆の面々に宝塚元トップスターの朝海ひかるが加わるのだ。自分なんて末席もいいところなのに何故だか一目置かれている。

それはまあ、切り開いて来たからだよ。いや、切り開いてくれたんだよ。

酔ったときにこぼした愚痴に坂本がそう答えてくれたことがある。これだから坂本昌行という人間を無下にはできないのだ。
自分たちの、結婚という選択を全面的に応援してくれて見守ってくれて矢面に立ってくれた。坂本がいなければ切り開くこともできなかった。

「坂本さんて、本人が決めたことは本当に背を押してくれるのね」
コンサート終わりに挨拶に来てくれた後でそう言ったら、
「そうなの。だから大好きなの！」
満面の笑みで答えた夫の表情が忘れられない。
自分たちの選択はわがままなんじゃないかと感じたりもしたけれど、坂本がいたから貫き通すことができたのだ。今度は、坂本の背中を自分たちが押すのだ。
坂本がしてくれたことの半分にも満たないような小さな小さな力かもしれないけれど、自分たちができることを返していくのみだ。