ハルのさやみる小説 (ページ21)

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私が喧嘩をやめた理由 ③ (アンこび) ページ21

｢よし。もうゆっくりしとけ｣

彩は私の怪我を丁寧に処置してくれた。
さすが看護学校なのか、こういうのには慣れていてすごく上手い。

彩が立ち上がりその場を立ち去ろうとした。

今は夏。
タンクトップ姿の彩の背中に見える傷

ギュッ

私は無意識に彩の背中に抱きついていた

｢ん？どしたんや？｣

｢私が怪我してると、あの時のこと思い出しちゃう？｣

｢…。｣

☆☆☆
(過去)

高校3年生になった時には、私と彩に勝つものはいなくて、アントニオとこびーなんていう名前までついていた。
私たちはこの高校のトップにのぼりつめた。
私たちのことを慕ってくれる後輩もできた。

3年生はいろいろあった。彩とはじめてぶつかった。

留年もしてもう一年目の3年生になり、私と彩の関係は変わっていた。

彩は大切な人。好きな人。

でも、そんなある日。

彩は姿を消した。

彩が誰かと電話をしていた時、一瞬眉を潜めた。
私が気づいていれば、ひとりにしなければよかったんだ。

｢こびーさん。
アントニオ姐さんとは連絡つきましたか？｣

｢家にも行ったんですが留守で｣

ガラガラ

走ってきたのだろう。肩で息をする後輩。

｢アントニオ姐さんが！｣

！？

｢アントニオ姐さんが拉致られました！｣

その言葉に驚きと恐怖でいっぱいだった

｢えっ？！拉致られた？｣

なにも言わない私に変わって、KYは聞き返した

｢情報はたしかです！場所もつきとめました！｣

｢アントニオ姐さんは、電話でうちの生徒が拉致られたと騙されて、呼び出されたらしいです。｣

｢つまりは、アントニオ姐さんが負けた？！｣

｢アントニオ姐さんが負けるわけない｣

(彩……！
そういえば…)

私の足は教室のドアへと向かっていた

パシッ

つかまれた右手

｢ダメです｣

｢っ…｣

｢アントニオ姐さんでも勝てんやったんに、私らでは勝てません！
他に方法が…｣

私はその手を振りほどいて、教室の扉を開けた

｢アントニオ、最近喧嘩で体痛めててん。だから負けたんや。
もしこの状況でアントニオなら、助けに来てくれるよ。私はだって助けに行かな。仲間やろ？｣

その一言で、みんなの目は変わり足は自然とこびーの後をついてきていた。