１６４話 ページ23
海兵さんの後ろをついて行き、船をおりる。
「お待たせしてすみません、鶴見さん」
「いや。こちらこそすまない、何度も呼んでしまって」
鶴見さんは優しく微笑み、海兵さんに何か指示をした。すると、海兵さんは駆け足で持ち場に戻って行った。必然的に二人きりになると、鶴見さんは再び私に向き直る。
「出航まで時間がないのでな。手短に」
一瞬で空気が引き締まる。目の前にいる者の瞳の奥が鋭く光る。
「後見……仮の親子関係とは言え、私はAくんのことを大切に思っている。本当に自分の子供にしたいほどにな」
(私もただの読者だったなら、喜んで貴方の子供になったでしょうね)
鶴見中尉は申し訳なさそうに目を閉じる。
「だがAくんは私のことを親だと思わなくてもいい。所詮この関係は私の自己満足」
「だから、今からおれのすることはその自己満足の延長だ」
ポスッ
私の頭に、鶴見中尉の手が置かれる。
「Счастливого пути 」
「……！」
流暢にそう言うと、鶴見中尉は微笑みながら私の頭を撫でる。その微笑みが、その姿が、
(じいちゃん……)
なんでこのタイミングで祖父と似たようなことを。意図的なのか、それとも偶然なのか。それでも、私の目が潤むのは容易かった。
「はい……行ってきます」
涙が溢れそうになるのを抑え、私は顔を上げる。同時に鶴見中尉の手も離れ、私は真っ直ぐ鶴見中尉の目を見る。
「I returns absolute……です」
そう言うと、私は踵を返し、船中に戻る。
(油断は禁物だけど、やっぱりあの人の前じゃあ何もかも敵わないや……)
船室に入り、ベッドの上に寝転がる。静かに瞼を閉じると、容赦なく睡魔に襲われる。しかし抗うこと無く、私は眠気に身を委ねた。
- 金 運: ★☆☆☆☆
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華洛 - いちにちでよみきってしまいました！すごく面白かったです！更新待ち続けます！ (2022年5月19日 23時) (
レス) @page34 id: 9cd2997260 (このIDを非表示/違反報告)
冬華(プロフ) - 更新待ってマス！！ (2022年3月24日 22時) (レス) @page34 id: df15541a66 (このIDを非表示/違反報告)
名無し95348号(プロフ) - とても面白くて一気に読んでしまいました！更新待っています！！！！ (2020年9月22日 7時) (レス) id: ca8cd08e4b (このIDを非表示/違反報告)
マリンバ - めっちゃ好きです！(唐突)大変だとは思いますが、更新頑張ってください！ (2020年3月19日 15時) (レス) id: dd11928539 (このIDを非表示/違反報告)
境 - このお話好きになってしまいました！！！！更新頑張って下さい！！応援してます！！！！！！ (2020年1月17日 21時) (レス) id: 7788c7aee9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：海豹 | 作成日時：2019年2月17日 1時
