小話詰め (ページ1)

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濵田はいつも不思議で仕方がなかった。

小瀧みたいに、顔もスタイルも性格も、全て兼ね備えた非の打ち所のない男が、自分を好きだということが。

勿論濵田もこの業界に入ったことを踏まえると、自分に自信が無いわけではない。のに、小瀧が絡んでくるとどうもどろどろとその自信が溶かされてしまう。

「濵ちゃん！今日も可愛いなぁ！」

「好きやで、濵ちゃん」

小瀧はいつも精一杯の愛を伝えてくれる。

小瀧と居る時はひどく安心するくせに、1人になると不安を掻き立てる、それらはまるで麻薬のようだった。

愛されているのは分かってる。
濵田が小瀧を疑ったことは無い。

大好きな声が自分を呼ぶ度に心は躍るし、大好きなその匂いで満たされる様に抱き締められる度に、泣きたくなるほど嬉しくなる。

だけどテレビの画面の中の小瀧の隣に、綺麗な女性が映る度に胸が締め付けられる。

(やっぱり、望はこんな風に綺麗な人と並んだ方が絵になるなぁ。)

そんな卑屈なことばかりを考えてしまうものだから、濵田は小瀧が映るテレビを最後まで見たことが無い。

放送日には決まって、「濵ちゃんあれ見てくれた？！」なんて嬉しそうに帰ってくる小瀧に本当のことなど言えるはずもなく、頷くだけだった濵田を満足そうに見つめて抱き寄せるから、濵田はいつも小さく縮こまっていた。

そんな濵田に、「可愛いなあ」なんてため息までついてしまう小瀧に、濵田は1種の苛立ちさえ覚えてしまう。

女々しいことだとは分かってるけれど、せめて少しでも気付いてはくれないものかと強ばらせた身体を可愛いと抱き締められてしまえば話はそれでお終いだ。

鈍感なところも含めて好きになってしまった俺が悪いのかもしれない。と濵田は肩を落とす。