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一二三兼独歩邸は男の二人暮らしの割には綺麗に保たれていた。少なくとも2LDKのLDの部分は綺麗だった
独歩の部屋は一二三が掃除してんだろうなと秋は考えると彼らの仲の良さに微笑ましくなる
「独歩、スーツ」
「はい。ありがとう」
独歩はスーツを渡すと脱衣場へ向かった
あたかも当然のようにスーツを受け取りハンガーにかける一二三を見て、どうにも慣れない思いになった
「何お前妻なの?」
「そそ、俺っちいいお嫁さんになんね!」
思わず笑ってしまう。多分だが独歩も一二三も俺も結婚できないなと思えた
そもそも自分には結婚願望がないのでそれで良いのだが
「秋、風呂入って来いよ。着替えは適当に使え」
「おっけー」
脱衣場から出てきた独歩と入れ代わり立ち代わりに風呂場に入る
長風呂は好かないタイプらしく15分もしないうちにリビングに戻った。適当にタオルで髪を乾かしていると背後にスっと一二三がやって来た。手にはドライヤーを持っている
「MC.GIGOLOのスタイリングコーナー!」
外野からいえーいと感情のない声で聞こえる。
「さあ今夜も始まりました『MC.GIGOLOのヘアスタイリングコーナー』。実況は私、平社員観音坂独歩がお送り致します」
実に抑揚のない声で実況が開始される。ダイニングの椅子に座らされ秋の手は膝の上に移された。先程までソファーに座っていた独歩は秋の隣に移動して秋の顔を覗き込んでいる
「……何なん?明日も会社あるしはよ寝たいねんけど」
事態を把握しきれず、思わず本音が母方の方弁で漏れた
「うわ、久しぶりに聞いたな。秋の関西弁」
「そんなんで寝たら風邪引くだろー。歌舞伎町No.1の俺っちに任せろって」
「大丈夫。一二三のドライヤー捌きはマジで寝れる」
思い思いに好き勝手言う彼らに突っ込むのも飽きた。勝手にしてと言うと同時に一二三の手は秋の髪を弄び始めた
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作者名:多田野 | 作者ホームページ:http://twitter.com/tada_tada_dream
作成日時:2019年4月21日 22時