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独歩の隣に座った秋は寂雷と向かい合う形となった
秋は初め一体どこに視線を置けばいいのか分からず頻りにメニューを見たり、食べ終えた皿を重ねて手前に置くなどした
あまり無愛想なのは良くないだろうと幼馴染み二人と会話をし、たまに寂雷に話を振るなど努めて明るいふりをした
「一二三くんが君を呼んだのは実は私が君に会いたいとお願いしたからなんだよ」
「はあ」
思わぬ告白に秋はたじろいた。なんだって急にただの一般人である自分が彼のような有名人に面会することになったのだろか
秋は飲んでいた烏龍茶のグラスを口から離しテーブルに置いた。戸惑いと緊張が混じった瞳で寂雷を見つめた
寂雷は左手を頬に寄せると秋の目を見てゆっくりと口を開いた
「うーん、目が充血してるね。隈も目立ってはないけどある。あと八代くんは食が細いね。お酒を飲まないことは良いことだけど君さっきから枝豆とだし巻きしか食べてなかったね。その様子だとやっぱり食生活が乱れてるのかな?」
「え?」
急に始まった健康診断に秋は目を丸くした。確かに心当たりはあった。最近は繁忙期、という程ではないが大きな仕事で舞い込み社内がピリピリとした雰囲気だったので、少々気が滅入り食事がままならないのも事実だった
最も彼の場合もとより不摂生ではあったが
目を白黒させていると、一二三が大袈裟に頷いた
「やっぱりなー!最近会ってねーから心配してたんだけど秋は生活力皆無だよな!」
「俺も人のこと言えないけど一二三がいるだけまだマシだしな。最近忙しいのか?」
隣の独歩にジトリと見られ、苦笑いでその場を凌ぐ
「まあ、な。……えと、今日呼び出されたのってこのため?」
いい歳して幼馴染み二人に心配されるほど自分には生活力がないのだろうかと秋は落ち込んだ
「いや私が君に興味が湧いて、一二三くんに連絡してもらっただけだよ。思ったより疲れた顔をしてて心配になってね。忙しいときに呼んでしまって、すまなかったね」
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作者名:多田野 | 作者ホームページ:http://twitter.com/tada_tada_dream
作成日時:2019年4月21日 22時