EVER BLUE -Beginning story- (ページ42)

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匠「…え、」

　

　

今まで見たことなかった、

匠海くんの動揺した顔

　

「…付き合って、欲しい…です。」

　

　

声が震えて、手をぎゅっと握った

耐えきれなくて目を閉じた

　

でもそれは彼の表情を見なかったことと同じで

　

　

―もっとちゃんと、彼を見ていれば

この後起こる出来事が、変わっていたかもしれないのに

　

　

匠「…葛木、」
　

　

匠「ごめん」

　

　

匠「俺、葛木の気持ちには応えられない」

　

まるで花瓶が割れたようだった

　

　

ガシャンと音を大きく立てて

バラバラに砕けていく

　

　

「…そっか、うん。」

匠「ごめん、…本当に」

「謝らないで！私が勝手に言っただけだからさ」
　

　

無理に笑って、彼を安心させようとする

そうでもしないと、壊れてしまいそうだ

　

　

「これからも、友達としてよろしく」

匠「…葛木」

　

　

でも不思議と

自分の気持ちを伝えたら楽になった気がした

　

　

重い荷物を置いたかのように、身体が軽くなったのだ

　

　

「じゃあ、また明日学校でね」

匠「…うん、またね」

　

　

別れ道

彼の背中がどんどん小さくなっていくのを見送り、私は走った

　

　

拓「おかえりー、なんか近所の人から…」

　

　

家に帰って靴を投げるように脱いで自分の部屋に入る

　

お兄ちゃんの声が聞こえてなかったわけじゃない

　

だけど今は

　

　

「…っふ、…うう」

　

あっけなく終わった片思いを、まだ離したくないから。

　

*