第2話【主人公】 ページ3
僕が生まれた日は雪が降る寒い日
生まれた僕を見て笑う両親の顔を見て、困惑していた
「あぅ…(な、なんで赤子に…!?)」
気がついたら知らない男女に抱き上げられており、視界には己の小さな紅葉のような両手
声を出そうとしてもあぅあぅと口が回らない
「(ぼ、僕…転生しちゃったのか?)」
さぁーっと体温が下がるのを感じた
「(でも…なんで転生?…確か学校で授業受けて…?)」
記憶が曖昧だ。なにかにやられて転生ってわけではなさそうだけど
悶々としながら考えるが、どれだけ考えても分からない
パチパチと音を立てて燃える暖炉の音が耳に入り、不意に眠気に襲われた
「ーーー〜♪」
母親が僕を優しく抱き上げながら子守唄を歌う
うとうとしていると父親がその場を離れる
そして部屋の扉を開けて、誰かを中に招き入れているのが見えた
「無事に生まれたのね…?」
「はい!凪様のお陰で妻は峠は超え、子も無事です…!」
「凪様…この子の名をつけてくださいませんか?」
眠そうにする僕の頭をそっと撫でるエメラルドグリーンの髪を持つ女性が視界に入り、僕の意識は沈んでいった
「…ロキ。この子の名はロキ。どんな困難にも乗り越えられる…強い子になりなさい」
…と、まぁ僕の誕生の話はこんなものだ
「…本当に、異世界なんだよな」
「キュ?」
微風が頬を撫でる
顔を上げては、木々の隙間からみえる太陽の光が眩しく目を細める
空を飛ぶ見たことのない生物
僕の周りをくるくると回る、狐の形をした幽霊のような青い炎。炎なのに通るたびにひんやりとした空気が漂う
木の根元に座り込むとそのまま寝転がる
「…僕、なんで転生したんだろ」
「はぁ〜い、ロキ♪」
「うわぁっ!?」
音もなく真横に現れ顔を覗き込む女性は、優しい笑みでこちらを見つめていた
「…凪ねぇ、驚かせないでよ」
「うふふ…つい、ね?」
くすくすと笑みを浮かべる彼女は、何処からか出した扇で口元を隠しながら、太陽の光にあたりキラキラとエメラルドグリーンの髪が光っていた
その容姿は見たことの無いくらい美しくて、元の世界で出会っていたら一瞬で恋に落ちていたかもしれない
「(…けど、凪ねぇは何考えているか分からないというか何というか)…はははっ」
「キュ〜」
「さぁ、帰りましょう?ロイドとリリィが待ってるわ」
「…うん。今いくよ」
僕は彼女に差し出された手を握り、家へと足を向けた
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作者名:神威空 | 作成日時:2021年5月6日 22時