【夏目友人帳】桜舞う頃に (ページ45)

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43 貴族ページ45

「……彼女は、5歳になったばかり。

遊びたい盛りで、どちらかというと、お転婆な女の

子だった。

そんなお転婆な姫君だが、女の子らしく花が好きだ

った。

中でも好んでいたのは、桜。

その当時の人々には、あまり好かれてはいなかった

桜だが、彼女は桜が好きだった。

庭に咲いていたのは、ヤマザクラ。

桜の代名詞とも言われるソメイヨシノは、もっと後

の時代のものなんだ。

だから彼女は、桜の咲く春が好きだった。

私も、少しずつ笑うようになった。

私に名前を付けてくれたのも、姫君。

夏目君、きみに教えている名前があるだろう？」

夏目君は、ゆっくりと頷いた。

「実は、それは本名じゃないんだ。

本当の名前は別にある。

本当の名は……、《平守春弥彦》という。

そう、私は確かに歴史を動かす貴族の家臣だった。

………これから起こる出来事が、分かってしまった

かい？」

夏目君は一瞬、驚いた顔をした。

そして、一言だけ呟いた。

「……はい。」

「そうか。

我が御家の家紋は、蝶。

時代を力強く羽ばたいた、蝶。

だから、その家に産まれた彼女の名前も蝶姫とい

う。

……そんな蝶姫が付けてくれた名前こそが、《春弥

彦》。

理由は、『春、弥生の季節に蝶と共に訪れる桜』

らしい。

それで、男だから『彦』を付けた。

結構乙女チックな命名由来だが、名前自体は気に入

っているんだ。

小さな主人が、一生懸命に考えて付けてくれた名で

もあるからね。」

私は出来る限り、柔らかく笑った。

彼らは時代を知っている。

これからどんなことが起こるのかも、きっと察しは

ついているだろう。

本題は、ここからだ。

私は再び、深く息を吸った。

お詫び

源平の戦いが起こったのは、今からおよそ800年前でした。
なので、およそ1000年前ではなく、800年前の出来事と考えて下さい。
私の調べ不足です。
申し訳ありませんでした。

また、史実では平家側に蝶姫という方は居ません。
架空の人物ですので、ご注意下さい。