【夏目友人帳】桜舞う頃に (ページ42)

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その後、私達は黙って歩いた。

社の目印の桜の木が見えてくる。

「もうすぐだ、ニャンコ先生。」

「そうか。」

短く言葉を交わす。

やっと社が見えてきた。

しかし、来るときに閉めたはずの扉が開いている。

急いで近づくと、夏目君が体を起こしていた。

「夏目君、もう大丈夫なのかい？」

「ええ、もう大丈夫です。

ご心配をおかけしてすみませんでした。」

「夏目、お前が倒れたおかげで此奴と二人で山登り

をしなくてはいけなかったのだぞ！

お前の分のまんじゅうも、ワタシが食うからな。」

さっきとは打って変わって、ニャンコ先生の声が穏

やかになっている。

安心したのだろうか。

先生が私に、視線を向けてきた。

心配しなくても、何もしないというのに。

「夏目が起きた事だし、早速酒盛りだー！」

先生の声が、蹴り上げた鞠の様に跳ね上がる。

私は式神に状況を聞き、礼を言った。

この式神は、私の唯一の友人だ。

正体も、目的も良く分からないが、色々やってくれ

るので、有り難い。

さてと、私も早速、酒盛りの準備をしようか。