【夏目友人帳】桜舞う頃に (ページ41)

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39 妖面ページ41

「後もう少しで社に着く。歩けるか、先生？」

私は先生の方を見て言った。

「ワタシはまだまだ歩けるぞ。

さあ、はやく行くぞ！

まんじゅう～まんじゅう～。」

先生は鼻歌を歌いながら、道を歩いていく。

そんな先生を、私が後から追って行く。

「ところでだ、A。」

いきなり名前を呼ばれて、少し驚いた。

歩きながら、話を続ける。

「なんだ、先生。」

「お前は、どうしてそんな精巧な面を着けている？

まるで、人の顔みたいな面を。」

「えっ？」

何を聞かれたか、一瞬分からなくなった。

一体、先生は何を言っているのか。

私の核心を突かれた気がした。

「笑う時、お前はいつも口角を上げるだけで、目が

笑っていない。

明らかに、お前の顔は面だと分かる。

しかし、人間には普通にお前の顔として見えている

らしい。

確かに、お前は瞬きも出来るし、喋ることだって出

来る。

眉だって動く。

見たところ、質感だって、人の肌と何にも変わりは

しない。

でも、確かに面だ。

もしや、その面は、妖面なのか？」

こんな招き猫みたいな図体で、とても的確なことを

言う。

もう、私には何も隠せない。

「……妖面、なのかもしれない。

この面は、私がまだ悪神だった頃に、私をここに封

じた陰陽師に貰った物だ。」

「力を封じる為にか？」

「いや、違う。罪を償う為だ。

私は、復讐の為に人から妖になった者。

そして、多くの者を殺した。

陰陽師は、私に面を渡してこう言った。

『ここに、桜の木を植える。

この桜の木が寿命を迎えるまで、お前はその面によ

って縛り付けられる。

お前の罪は、そのくらい重いのだ。』と。」

私は歩きながら、先に行く先生に、そう言った。

ニャンコ先生は静かに聞いていた。

「やはり、お前の顔は面だったのか。」

「流石、先生と呼ばれるだけあって凄い観察力だ。

初めて、見破られたよ。

その桜の木は、私の社の近くに植わってる。

目印なんだ。

もうすぐだ、行こう。ニャンコ先生。」

私は、いつもの調子で先生に言う。

すると突然、先生が足を止めた。

「……夏目がいないうちに言っておく。

ワタシは、お前が悪神でも善神でも、構わない。

でもな、これだけは覚えておけ。

彼奴に妙な事を吹き込んだり、手を出したら、ワタ

シは容赦せんぞ。

面を被った、愚かな神よ。」

私は、先生から危険人物指定を受けたようだ。

……やはり、私と先生は相容れない。