【夏目友人帳】桜舞う頃に (ページ40)

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夏目君はもう目を覚ましたのだろうか。

少し心配になる。

「お前はまだ、人への情を捨てきれていない。

だから、お前は矛盾した言動を何度も繰り返してい

る。違うか？」

先生が私に問うてきた。

「そうだな、私は矛盾しているよ。

私は夏目君が衰弱するのを分かっていて、この場所

に呼んだんだ。」

自分でもよくわからない。

この絵本みたいな美しい世界を見せたかったから？

それとも彼を、あの子を殺そうと？

どちらにしても、私は夏目君にとって危険なものに

違いない。

「なあ、A。

聞いてなかったが、何故ここには強力な結界が張っ

てあるのだ。

お前程度の力ならば、こんな結界張らなくても良い

だろう。」

確かに、私はそこまで霊力は強くない。

元々は人だったし、人だった頃も妖なんてものは、

一回も見たことのないくらいだ。

「先生の言う通り、今の私は、そこまで力は強くな

い。

でも、妖へ変化した当初は負の怨念が凄かったん

だ。

だから、人々も私を恐れて神と崇めた。

信仰が集まると、そのような力はより強大になる。

そしてその力を使って、私は復讐を遂行した。

そして、その姿を見た人々はまた恐れをなして神と

崇める。

どんどん信仰が集まって、手がつけられなくなる前

に、当時の陰陽師は私をこの結界の中へと封じたん

だ。

今ではその力も弱まって、自由に出入り出来る様に

なったけれどね。」

私は、また張り付けられた笑みを浮かべる。

「ふん、なるほどな。

確かに、お前は神として崇められていた。

しかし、正体としては祟り神の様な悪神の一種か。

そんな奴と勝負とはレイコも無茶苦茶な女だな。」

「でも、レイコと出会った頃はもう、その様な一面

は身を潜めて善神として崇められていたんだ。

信仰ではないけれど、私はこの辺りの民話として出

てくるから、辛うじて消えないで済んでいる。」

善神なのかは、自分でも未だ良く分からない。

でもきっと、まだ悪神の名残りがあるのだろう。

「一種の土地神なのか。」

ニャンコ先生が言った。

「まあ、そうだな。」

顎に手を当てながら、私は言った。