【夏目友人帳】桜舞う頃に (ページ36)

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35 感情ページ36

夢主視点

神になったばかりの頃の記憶を少し、思い出してし

まっていた。

まだ人だった時も、感情を表に出さない事が多かっ

た。

感情を知らなかったから、出せなかったのかもしれ

ない。

でも、今は違う。

時間が経つにつれて、感情が乏しくなった。

気持ちの波すらほとんどない。

昔は感じていただろう、怒りや悲しみなどはもう、

私にはない。

今の私に出来ることはただ一つ。

笑うことだけ。

この張り付いた面と共に、張り付いた笑みを浮かべ

るだけしかできない。

人から遠くなっていく。

このままでは姫君のことさえも、忘れてしまう。

大切な記憶が、消えていってしまう。

これも、面の力なのだろうか。

このまま私は《人形》になってしまうのだろうか。

そう思うと、寒気がした。

社には着いたが、ニャンコ先生を置いてきてしまっ

た。

自分の世界に入り込んでしまっていて、気付かなか

った。

夏目君を布団に寝かせ、脈を測る。

特に異常はない。

冷たいタオルを頭にのせて、使い魔にみている様に

頼む。

はやく、ニャンコ先生を連れて来なければ。

来た道を急いで戻る。

先生は、案の定怒っていた。

鋭い視線が飛び交う。

「…夏目をどこに隠した。」

「隠してなんかいない。

心配無用。私の社で寝ているよ。」