1歩 ページ7
「今日はいっぱい頑張ったもんね。
今日はもうお家に帰って、明日からまた頑張ることしよっか？」
小山先生が、私が頷きやすいような聞き方をする。
ここで頷くのは簡単だ。
でもいまここで逃げたら、明日はもう学校に行けなくなる気がする。
「まだ、帰らない。
…でも、もうちょっとここにいてもいい？」
教室に戻るということは、今のこの最低な現実と向き合うということだ。
その勇気と気力は、中々でない。
「そう、ならゆっくりしていきな。
あ、誰か来た。」
小山先生がそう言ったから、入り口のドアに目を向けると、山下くんが立っていた。
「失礼しまーす。
小山先生、熱あるかもしれないんで、測らせてください。」
「風邪？来室記録に症状書いてね。」
山下くんが、体温計を脇に挟みながら来室記録の問診にチェックを入れていく。
「体育のとき、元気そうだったのにな。」
「英語のときも普通だったけど。
急にきちゃった感じ？」
増田先生と手越が口々に言う。
「まあ、そんなとこです。
ところで、Aはもう平気なの？」
「え？あ、うん。たぶんもう歩ける。」
「なら、早く戻ってメシ食った方いいよ。
5時間目の化学、実験するからいつもより10分早く集まれって言われてるの。」
「まぁまぁ。Aちゃんも無理は禁物だからさ。
で、熱あったの？」
小山先生がさっきの会話を気にしてか、山下くんにそう言う。
「気のせいだったみたいだから、教室に戻ります。
もう平気なら、一緒に戻る？まだキツいならいいけど…」
正直なところ、まだ教室には戻りたくなかった。
だけど、一緒に戻るかと声を掛けてくれたのが嬉しくて、もう少しだけ頑張ってみようと思えた。
「うん。そうする。
ありがとうございました。」
「いえいえ、またおいで。」
小山先生達に見送られ、私はまた教室に戻った。
「お、おかえり。はよメシ食おうぜ。」
私の隣の席では、山下くんを待っていたであろう関西弁の男子が、弁当を広げている。
「お待たせ。」
「ホントにお待たせだっちゅーの。
お前、大丈夫やったか？体育の後。」
…あ、私に聞いてるのか。
「うん、ありがと。」
「Aちゃんのお弁当すごい、ちょー美味しそうじゃん！」
前でご飯を食べた女子たちが、振り返って話しかけてくれた。
「うん、お母さん張り切っちゃって。」
気づけばその女子達は、私の机の上に弁当箱を置いていた。
そして、みんなと自然にお喋りしていた。
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s.s1103(プロフ) - 早く続きを読みたいです。更新楽しみにしてます！ (2021年10月27日 1時) (
レス) id: 78b3ca447f (このIDを非表示/違反報告)
彩紅蘭 - お気に入りです！応援してます！更新､頑張って下さい！ (2019年5月9日 1時) (レス) id: 59a4f60278 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：作者 | 作成日時：2018年12月28日 11時
