Snow×Snow

頼み事 ページ30

(hikaru side)



「あ、」

『あ、照おはよ』



事務所から次の現場へ移動するまでの空き時間。
由菜いねぇかな、って事務所をうろうろしてたら、由菜……じゃなくてAに会った。

あー……まぁいっか、Aで。



『……なに？その反応』

「や、別に。ちょうどいいところに来たからさ」

『……なんか嫌な予感』

「なんでだよ(笑)
なあお前今日の仕事終わり空いてる？」

『……え、空いてる、けど』

「いや、そんな不審者見るような目で見んなって」



俺がAを誘った事なんて未だかつてなかったからか、警戒心を隠し切れてない顔で俺を見る彼女。

なんでだよ、俺が誘ったらダメなわけ？てかそもそも誘いたいんじゃないんたけど。



「今日さ、佐久間んち行ってくれねぇ？」

『はぁ？』

「アイツ熱出しちゃったんだってさ、」



マネージャーに聞いたら佐久間に渡さなきゃいけない今度の番組の資料もあるみたいだし、飲み物とか食べ物とかついでに差し入れてやろうかなって。

……そう思ったんだけど、残念ながら今日は夜まで舘さんとラウと仕事入ってて。当然ながらマネージャーも暇じゃなくて。

だから由菜が空いてるなら、軽くお粥とかも作ってくれそうだしいいかな、って思って探してたんだけど見当たらなくてさ。


そう言ったら、『悪いけどお粥くらい私も作れるから』って怒られた。
マジか、ごめん。見くびってたわ。



『由菜は今日ふっかと地方ロケじゃなかった？』

「あれ？…………あ、マジだ」



スマホ再度確認したら確かにその通りで。さっき1日見間違えてたわ。事務所で打ち合わせは昨日だったんだな。



『……別に大ちゃんち行くのは良いけどさ、』

「マジ？じゃあこれ頼んだ！」



マネージャーから預かった資料を手渡せば、Aはちょっと顔を歪めて。


『……私でいいのかなあ、』って小さく呟かれた台詞、
俺はこの時、もう少しちゃんと聞いてやれば良かったのだろうか。



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