姫カット ページ20
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「モモちゃん、姫カットって似合うと思う?」
紅白のリハーサルを終えて少し時間があった私は、同じく紅白に出演するミサモ先輩たちの控え室にお邪魔していた。
紅白なんて有名な番組だから私たちが出れると聞いて凄く驚いたし、今もまだ緊張しているけどこの三人のお姉さんたちのおかげで少し和らいでいる。
話は戻り、私がモモちゃんにそう聞くと「姫カットにするん?」なんてサナちゃんが嬉しそうに聞いてきたのだった。
「Aならなんでも似合いそうやけど」
「似合うんやない?黒くするの?」
「茶色!年明けたら美容院行くことになってて……でも髪はきらないと思う。怒られるから」
「え、怒られるの?」
一度、神メニューの時にショートカットにしたいと無理を言ってしたけどそれ以降私が短くしたいと言うと必ず返事はノー。髪色は好きなのにしていいけどAはロングにしていなさい、とこっぴどく叱られた。それもメンバーたちの前で。
だからそれ以降はずっと今と同じくらいの長さを保っていた。今年一回目のカムバの時も切りたいなぁとそれとなくスキジキに言ったけど、ダメだと口酸っぱく言われた。だからちょっと飽きてきている。前髪を伸ばすのもいいんだけど、これもまたあまりいい顔をしない。前髪があって髪は長く幼い顔のイメージにしたいらしい。
「ソラもあるんやね、そういうの」
「いっぱいあるよ。デビューしたときは私だけ体型が違うから一日この量食べなさい、運動しなさいって決められてた」
「それはそれで嫌やなあ」
可哀想に、なんて私をハグして頭を撫でてくれるサナちゃんに擦り寄ると「かわいい〜!」なんてもっとキツく抱きしめられた。なんだか懐かしいかも。
人見知りが激しかった私は同じ日本生まれと言うだけでミナちゃんたちに懐いてずっと傍をくっついて回っていた。いくら祖父母の家が韓国とはいえ一人じゃ何も出来ない私に、お姉さん三人とも私のことをよく可愛がってくれていてそれに甘えていた。
「それで、ソラはしたいの?したくないの?」
「……ちょっと、やってみたい」
「やったら、答えは出てるやん」
「でもスタッフさん怖いんやもん〜……ここにしわ寄せて怒るの、みんなの前で」
「うちらの名前出せばええやん!ミサモがいいって言うてたって」
ミナちゃんが「やりたい時にやっとかないと後悔するよ」なんて言ってくれて、腹を括った。
変にスタッフさんたちに伝わるのも嫌だったからメンバーにも、友だちにも誰にも言わず姫カットをしよう、と決めたのだった。
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作者名:さくらんぼ | 作成日時:2023年10月21日 10時