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「……スンミナ」



ドアの向こうから聞こえてきたのはソラの声だった。

ヨンボギやイエニではなくわざわざこっちに来るなんてどうしたのかとドアを開けると、マグカップを二つ持って不安そうな顔をしたソラがいてとりあえずと部屋に招き入れたのだった。



「入れてきてくれたの?」

「夜だからホットミルクだけど……」

「うん、ありがとう」



先にベッドに腰かけて、隣にくるように横側を軽く叩くとソラはゆっくりと腰を下ろした。

明日はリムジンサービスの収録があるから喉のためにも早く寝るんだ、と誰よりも早くお風呂に入って自分の部屋に戻って行ったのにあれから数時間が経って今はもう夜中だった。

ホットミルクを少し飲んだところを見て、ソラに「何かあったの?」と顔を覗いて聞いてみるとあのね、と話し始めたのだった。



「目を瞑ったら、声が裏返ったらどうしようとか上手くいかなかったらどうしようとか、色々考えたら眠れなくなって……」

「それで僕のところ来たんだ?」

「スンミニも去年出た時に緊張してたでしょ?だからどうしてたかなって……それと、スンミニとは歌のこと沢山話してきたから」



イエニとだって歌について沢山話してきたのを知っている。僕たちは末っ子三人でこのグループのボーカル担当だし、僕がソラと共有していることを僕とイエニだってしているし、それはソラとイエニだってそう。

イエニのところに行かなかったのは、大方起こすのが可哀想だとか、年下にかっこ悪い姿を見せたくないだとかそんな理由なんだろうけど、それでも僕のところに来てくれたのが少し、嬉しかった。



「そんなに心配する必要ないと思うよ」

「答えになってないし……」

「だってソラ、毎日ちゃんと練習してるじゃん。喉のケアもよくしてるし、緊張してても本番では上手くやってるでしょ?」

「それはその時上手くいったからで……」

「失敗してた時の方が少ないけど?というかほぼないじゃん」



ソラは本当に本番に強い。いつも直前まで緊張してる割にはコンディション最高でステージに立っているのだ。



「大丈夫、上手くいくよ。問題ない」

「ほんとうに?」

「うん。明日見に行こうか?」

「や、それは……大丈夫」



ホットミルクを飲み終えたソラは、少し眠たそうに目が垂れていて、寝かせてあげないとなと思った。

ソラの部屋まで送って眠れそうかと聞いたら、これも少し不安そうにしていたけど「スンミニのおかげで眠れそう」と言って部屋に戻っていった。

明日の収録が上手く行きますようにと、応援しながら自分も眠りについたのだった。

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作者名:さくらんぼ | 作成日時:2023年10月21日 10時

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