そのくらいさせて ページ29
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お腹が空いたからと近くのコンビニで降ろしてもらって、買い物を終えて今日も一日疲れたなあ、と思いながら道を歩いた。
忙しくないよりは忙しいほうが好き。だって、それほどその業界に必要とされてる気がして、露出が多ければファンのみんなも喜んでくれる気がして。
(もうこんな時間になっちゃった……)
今日はかなり夜遅くまで忙しかった。辺りはもう窓から漏れる光も少なく、ほとんどが街灯の明かりと月の光だけだった。
結構、この空気が好きだったりする。人の多いところにいることが多いからかこの誰もいなくて、静かで、鳴ってるのは私の歩く音だけが響くこの時間が心地良い。
けど、一人、また一人と宿舎のマンションに近づく度に増えていく人たちに身構えた。
最近、よくあることだった。会社が声明を出したみたいだけど懲りずに、バレていないと思ってるんだろうけどスマホのカメラをこちらに向けて写真を撮られる。
今日も、それだけだと思っていた。足早に入口を通り抜けてエントランスに入ってしまえばとりあえず、一安心だと思っていたのに。
「え……」
バシャ、と音を立てたのは水か何かで、なんだかデジャブだなあ、なんて思っていたら私の目の前に垂れてきたのは色のついた液体で。思わず歩いていた足が止まってしまった。
甘い匂いがするからジュースかなにかなんだと思う。せっかく、最近買ったばかりのコートだったのにクリーニングに出さないと、髪もベタベタするじゃん、なんて思っていた時。
二度目。今度は透明だったけど、その代わり少し熱くて。多分熱湯だったんだと思う。今は冬だし、その前に冷たいのを被ってるし元々怪我をさせるつもりなんてなかったのかもしれない。
耳に突き刺さるように入ってくる「韓国にいるな」とか「早くやめろ」だとか、そんな言葉に涙が出そうになる。
その瞬間を撮られているのも分かったし、もう相手をするのさえ面倒で_そもそも反応するものではないけど_今度こそ急いで宿舎へ戻ったのだった。
「……起きてないといいなあ」
ドアを開ける前、ぼそっと呟いた。
もし、誰かが起きていて「大丈夫?」と声をかけられたら泣いてしまう気がして。こんな姿も見られたくなくて。
ゆっくりと、極力音が鳴らないように開けてまずは宿舎に入る。濡れたコートをひとまず脱いでから乾かそうと思って洗面所の方に持って行った。ここまでは良かった。でも自分の部屋に行くのにリビングを通らなくてはならなくて。
そのドアをまたあけた時。
「……ソラ?」
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さとみ - ありがとございます。こちらこそ余計な事を…。すみませんでした。続編楽しみにしています。これからも頑張って下さい。 (2023年3月2日 23時) (レス) id: 1dc70ba9d0 (このIDを非表示/違反報告)
さくらんぼ(プロフ) - さとみさん» コメントありがとうございます🙌🏻続編が出来たらリンクを貼るように書いてあるだけで、まだ続編はできてないです。紛らわしいことしてしまってすみません🙏お待ちいただければと思います。 (2023年3月2日 23時) (レス) id: 208005c528 (このIDを非表示/違反報告)
さとみ - こんばんは。 この前のお話しの最後に続編公開しましたと書いてあったのですが多分続編のってないかと思われます。これからも楽しいお話し読ませて下さい。よろしくお願いします。 (2023年3月2日 23時) (レス) id: 1dc70ba9d0 (このIDを非表示/違反報告)
さくらんぼ(プロフ) - カリナさん» コメントありがとうございます🙌🏻理想だなんてそう言っていただけて嬉しいです🥲更新頑張ります〜🫶🏻 (2023年2月23日 13時) (レス) id: 208005c528 (このIDを非表示/違反報告)
カリナ - 私の理想のお話です。本当に作ってくれてありがとうございます😊。続きが楽しみです。本当にこんな事があるといいなぁと思いながら読んでます。(叶わぬ夢)最後楽しみです。更新待ってまーふ😘 (2023年2月21日 22時) (レス) @page42 id: 28026e5e75 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さくらんぼ | 作成日時:2022年11月2日 23時