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ポアロから無事抜け出せ、はや歩きで向かう。早く帰らなきゃ行けないのは本当だからな。けど今日は命日じゃない、嘘だ。
でもこうでも言わないと、離してくれなかっただろう。それにこう言えば罪悪感で今後誘いにくくなる。彼奴が自分を責め、申し訳なくて話しかけることも関わることもなくなってしまえばいいと思った。
そのための合理的な虚偽。だから、彼奴があんな傷付いた顔をするのも知ってて言った。
なのに、何動揺してるだ。分かっていただろう…?
はや歩きのまま曲がり角を曲がる。すると誰かにぶつかったようだ、ぐらりと体が傾いた。後ろには固いコンクリート、このままいけば頭から…。
「おっと」
『!?』
ぶつかった人が後ろに倒れそうになった私の腰に手を回し、支えてくれた。顔が近いなとは思ったが、先にお礼を言う。
『あ、沖矢さん。ありがとうございます!』
「…いえ、お気になさらず」
沖矢さんは数秒真顔で固まった後、いつもの笑顔に戻った。何か変なこと言ったか…?沖矢さんの表情をまじまじと見つめ、考えるが全く思い付かない。
「そんなに見られると照れてしまいます…」
『そーですよね、ごめんなさい』
慌てて目を反らすも、腰に手を回されてて変わらず近い。
『あの、もう大丈夫ですよ?手…』
「あぁ、そうですよね」
『ふふ、なんか初めて会ったときに似てますね…』
「そうですね。あの時はびっくりしましたよ。いきなりアドレスを渡されて…」
そうだったな、たしか食材全て駄目にして、でも急いでたから後で連絡くださいって渡したんだっけ?半ば押し付けていったけど。
『えーだってお詫びしなきゃって思うじゃないですか』
「その気持ちも分かりますけどね…。
というか、前あれほど忠告したのに、またこうしてぶつかるとは思いませんでしたよ」
あ、思い出した。この前散々言われたじゃないか。危機感をもて、と。
知らない人にアドレスを渡さない、そもそも危ないから曲がり角は特に注意しろ…とか色々。
説教は面倒だ。そしてそれは回数と比例して長くなるもの。よし逃げよう。
『あー、私用事が〜』
「…はぁ、気をつけてくださいね」
私が走り出したら、後ろから聞こえた声。それに振り向いて、はーいと返事をしてからまた走り出した。
あー、それにしても惜しかったなぁ。少し痛みを感じれば、この悶々とした感情がすっきりすると思うのに。まぁ、ただの一時の気休めの自己満足にすぎないが。
ていうか、助けてくれたのにこんなこと考えてるだなんて…
…やっぱ最低だ。
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作者名:佐々木紗季 | 作成日時:2019年5月2日 19時