EP49 ページ4
え？今この子、好きって言った？
氷浦くん…って、貴利名だよね？
「国木田？」
背後から聞こえた声に、勢いよく振り返る。
目の前には風丸先輩がいた。
「いっ…たぁ…」
「おいおい、大丈夫か？」
振り返った勢いで後頭部を壁にぶつけてしまった。
頭を抑えてしゃがみ込む私に、先輩は心配そうに声をかけてくれる。
そこまで痛いわけでもないのに、なぜか涙で視界が歪んだ。
「誰かいるのか？」
私が頭をぶつけた音が図書室内にも響いたのか、中にいた貴利名と女の子が顔を出した。
「っ…！ご、ごめんっ」
「あ、おい、国木田！」
貴利名の顔を見た瞬間、一瞬忘れていた告白の現場が頭をよぎり
目に溜まった涙が溢れそうで、私はその場から逃げた。
貴利名、オッケーするのかな。
あの子と付き合うのかな。
かわいい子だったしなぁ…
なんか私、逃げてばっかりじゃん。
そんなことを考えていると、後ろから手を掴まれた。
「はぁ…ったく、どこまで行くつもりだよ」
「かぜまる、せんぱ…」
肩で息をして、少し呆れた顔で先輩は私を見ていた。
どうして追いかけてきてくれたんだろう。
あぁ、人目につかないところで泣きたかったのに。
「っ…うぅ〜…」
我慢できずに泣き出した私の手を引き、何も言わずに使われていない空き教室へ連れて行ってくれた。
溢れる涙を抑えられない私を優しく抱きしめ、ただ黙って背中をさする。
先輩に抱きしめられながらでも、思い浮かぶのは貴利名の顔だ。
あの子と付き合うことになったらどうしよう。
もう、今までみたいに仲良くしてくれなくなるだろうか。
そんなの嫌だ。
友達として喜ぶべきことのはずなのに、全然喜べない自分に腹がたつ。
「…氷浦が好きなんだな」
優しい声で先輩に言われ、ようやく自覚した。
そうか、私は貴利名が好きなんだ。
そう考えれば、今までの自分が抱いた感情に納得できた。
「…はい」
「そうか」
先輩に昨日のお礼を言うことも、委員会のことも忘れ
ただ彼に対するやり場のない感情を、無責任にも無言で先輩にぶつけた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 26人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
さきこ(プロフ) - カミカさん» ありがとうございます！がんばります〜(*´-`) (2018年11月25日 19時) (
レス) id: b0083ad673 (このIDを非表示/違反報告)
カミカ - これからも続けれるように頑張ってください！楽しみにしてます！ (2018年11月25日 16時) (レス) id: b42da9a3fb (このIDを非表示/違反報告)
さきこ(プロフ) - 星水さん» わあああありがとうございます！！すごく励みになります…(*´-`)がんばります！！ (2018年11月6日 23時) (レス) id: b0083ad673 (このIDを非表示/違反報告)
星水 - 続編おめでとうございます！前作からずっと影ながら応援してました、、！ とても面白いです！国木田ちゃんと氷浦くんが仲直りできますように、、！更新頑張ってください！ (2018年11月6日 20時) (レス) id: 3c634cce7d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：さきこ | 作成日時：2018年11月1日 20時
