四 ページ5
side.U
平蔵に『鹿野院の詐欺防止劇場』の
台本を書いてほしいと頼まれて、
僕は今日も今日とて机に向かっていた。
その脇腹辺りには、当の依頼主が
べったりと抱きついて休息を取っている。
「……平蔵、そんなに引っ付かれると書きづらいよ。ていうか、こんなところで油を売ってていいの？」
「ここが一番落ち着くんだよ。それに、探偵にだって一時間の休憩を取る権利はあるからね」
平蔵は昔から小鴨のように
僕の後ろをついて回っていたけど、
最近ではついて回るどころか引っ付いてきている。
こうも直接的に甘えられると無碍に出来ず、
受け入れてしまう僕も僕なんだけど。
「悦さんも、伊庭じいさんも、荒瀧一斗も無事に誘うことが出来たから、役者は揃ったし一安心だよ」
「そうかい、お疲れ様」
平蔵は確か海祇島に行っていたはず。
そこから帰ってきてすぐ、
役者を探しに駆け回ったのなら
そこそこ疲労も溜まっていて然る。
だからって僕に抱きついても、
その疲労が解消されるとは思えないけど。
「少し寝るといいよ。書き終わったら起こすから」
「んー……そうしようかな。ありがとう」
ふぁ、と欠伸をして、
平蔵はさも当然と言わんばかりに
僕の膝を枕にして、仰向けに寝転がった。
そのまま目を閉じ、静かになったので
僕も少しゆっくりめに、筆を進めた。
「……A」
「うん？」
「まだ、話す気にはならない？」
ぴた、と筆を止めてしまった。
それを誤魔化すように笑って、
「あれは僕の不注意、ただの事故だよ」と
いつも通りの返事をした。
「……じゃあ、なんで……────
──Aの左腕は、現場のどこにも無かったの？」
もう何百と聞かされた質問に、
僕は至って平静な態度で「さあね」と返した。
「雨に流れたか、動物が持っていったんだろう」
「……そう」
平蔵は諦めたように、目元に腕を乗せて
眠りに入ったのか、それ以上は何も言わなかった。
- 金 運: ★☆☆☆☆
- 恋愛運: ★★★☆☆
- 健康運: ★★★★★
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m - コメント失礼します。題名と内容が本当に綺麗に収まっていて、とっても感動しました。読んでいてると、いつの間にかお話に入り込んでしまうような、綺麗な文章と構成に本当に尊敬します。いつか、作者様が明るい気持ちでこちらへ帰ってきてくださることを願います。 (8月16日 23時) (
レス) id: 682a324aa4 (このIDを非表示/違反報告)
塩キャラメル(プロフ) - 涙ドバドバ…大好きですもう…。主様のスピードで大丈夫です。いつでも待ってます。 (5月22日 22時) (レス) @page16 id: fdfca7d6d9 (このIDを非表示/違反報告)
なっつ。(プロフ) - すっっっごく気になる所で終わっている...ゆっくりでもいいので続き待ってます...！！ (2023年3月21日 1時) (レス) @page16 id: f68b2b1abd (このIDを非表示/違反報告)
成瀬(プロフ) - すごく好きな作品です……！ 更新待ってます！ どうか無理せずに頑張ってください (2022年12月8日 0時) (レス) @page16 id: 5abadf1a2d (このIDを非表示/違反報告)
ゆずポン美味しい - これを見るのが毎日の日課じゃぁああ！…あｯすみません！更新楽しみにしてます！頑張ってください！ (2022年8月12日 2時) (レス) id: 3d7d623247 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Re: | 作者ホームページ：http://uranai
作成日時：2022年7月25日 19時
