三 ページ4
そんなAは、過去にとんでもない"事故"に遭い
左腕を失う大怪我を負った。
──それは魔物による襲撃。
……ということになっている。
自然に触れるのが人一倍好きな彼は、
普段こそ机に向かってばかりだけど
月に何度か、草花や爽風を求めて町を出ていた。
その習慣は小さい頃から健在で、
彼は聡明でしっかりとした子供だったから
両親にも「暗くなる前に帰るなら」と
一人で山に行くことを了承されていた。
だけどその日は、日が暮れ、
翌朝を迎えても帰ってこなくて。
夕暮れには心配性の母親が奉行所に駆け込み、
捜索依頼をして、騒ぎを聞きつけた
町の大人たちも付近の山を探した。
僕も大人たちと一緒になって探した。
嵌め絵をせずついて行けば良かったと、
あの日ほど後悔したことはない。
結局、Aが見つかったのは
それから二週間も経ってからだった。
Aはいつも行っていた山の奥にある、
ヒルチャールの巣で発見された。
近くを捜索していた僕は急いでそこへ駆けつけて
血塗れで運ばれていくAを見た。
Aはそのとき、左腕を失っていた。
当時はまだ探偵をやっていなくて、
そういった光景に不慣れだった僕は
Aの凄惨な状態に甚く動揺した。
だからろくに調べることも出来ずに
ただただ泣いちゃって。
僕は大人たちに励まされながら、
Aを追って山を降りたんだけど
今ではそれをとても後悔している。
それが丁度梅雨の時期だったから、
Aが目を覚ますまでに何日も雨が降ったんだ。
僕はなかなか立ち直れなくて
Aの目が覚めるまで、彼の無事を祈るだけで
何も行動を起こさなかった。
──否、起こせなかった、とも言える。
というのも、この一件は
"不用意に山奥へ進んだ子供が魔物に襲われた"
という、よくある事故として処理された。
目を覚ましたAも当然、
「好奇心でいつもより奥へ行ったら、ヒルチャールに見つかった」
と説明したし、誰もそれを疑わなかった。
────だけど。
後々になって僕は、
これは事故ではなく事件なんじゃないか？
と、遅すぎる疑問を抱くようになった。
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m - コメント失礼します。題名と内容が本当に綺麗に収まっていて、とっても感動しました。読んでいてると、いつの間にかお話に入り込んでしまうような、綺麗な文章と構成に本当に尊敬します。いつか、作者様が明るい気持ちでこちらへ帰ってきてくださることを願います。 (8月16日 23時) (
レス) id: 682a324aa4 (このIDを非表示/違反報告)
塩キャラメル(プロフ) - 涙ドバドバ…大好きですもう…。主様のスピードで大丈夫です。いつでも待ってます。 (5月22日 22時) (レス) @page16 id: fdfca7d6d9 (このIDを非表示/違反報告)
なっつ。(プロフ) - すっっっごく気になる所で終わっている...ゆっくりでもいいので続き待ってます...！！ (2023年3月21日 1時) (レス) @page16 id: f68b2b1abd (このIDを非表示/違反報告)
成瀬(プロフ) - すごく好きな作品です……！ 更新待ってます！ どうか無理せずに頑張ってください (2022年12月8日 0時) (レス) @page16 id: 5abadf1a2d (このIDを非表示/違反報告)
ゆずポン美味しい - これを見るのが毎日の日課じゃぁああ！…あｯすみません！更新楽しみにしてます！頑張ってください！ (2022年8月12日 2時) (レス) id: 3d7d623247 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Re: | 作者ホームページ：http://uranai
作成日時：2022年7月25日 19時
