十一 ページ12
side.U
耳の奥でずっと、嫌な音が鳴り続けて
頭の中がぐちゃぐちゃになって、
どんどん思考を奪われる、この感覚が嫌いだった。
今でも頻繁に、あの日の夢を見る。
薄暗い場所、血腥い匂い、冷たい感触。
終わりの見えない苦しみと、絶え間ない痛み。
もう、忘れたいのに。
「……A、横になるのはまだしんどい？」
平蔵が優しい声色で、
僕の手を握ったままそう問いかける。
……横になるのは、平気なんだけど。
どう答えるか少し迷っていたら、
平蔵が僕の考えを見抜いたように
「まだこうしていたい？」と訊いてくる。
頷くと、平蔵は「わかった」と言って
僕と手を繋いだまま寝転がって、
僕を布団に中に引きずり込んだ。
「よし、これならいいよね。心配しないで、Aが寝るまで僕も寝ないから」
物凄く自然と腕枕をされていて、
一体どこでこんな芸当を覚えてきたのか、と
苦笑しながら「これ、好きだな」と素直に言う。
今日はなんだか感傷的で、
気持ちの制御が上手くいかない。
無性に甘えたくて、だけど
それをそのまま言うのは気が引けて。
「そう？ それなら今度からはこうしようか」
「それはさすがに」
「Aがよく眠れる上に、布団も一つ減らせるなんて一石二鳥じゃない？」
「……平蔵はそれでいいの？」
「じゃなきゃ言ってないよ」
そう言われると、もう拒めず。
風邪の引き始めなのか、時々咳が出る。
平蔵にうつしてしまわないか心配で、
咳を出来るだけ抑えていると、
平蔵が抱き締めるようにして背中を擦ってくれる。
「……しんどい？ 結構悪いみたいだし、夜が明けたら診療所に行こうか」
「ん、……ごめんね」
「なんで謝るのさ。何も気にしなくていいんだよ」
ぽん、ぽん、と一定の間隔で
背中を優しく、あやすように叩かれて
体力も削れていたからか、自然と睡魔がやってくる。
「おやすみ、A」
平蔵の甘くて溶けそうな声を最後に、
僕は久しぶりに、心地の好い眠りについた。
- 金 運: ★☆☆☆☆
- 恋愛運: ★★★☆☆
- 健康運: ★★★★★
- 全体運: ★★★☆☆
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m - コメント失礼します。題名と内容が本当に綺麗に収まっていて、とっても感動しました。読んでいてると、いつの間にかお話に入り込んでしまうような、綺麗な文章と構成に本当に尊敬します。いつか、作者様が明るい気持ちでこちらへ帰ってきてくださることを願います。 (8月16日 23時) (
レス) id: 682a324aa4 (このIDを非表示/違反報告)
塩キャラメル(プロフ) - 涙ドバドバ…大好きですもう…。主様のスピードで大丈夫です。いつでも待ってます。 (5月22日 22時) (レス) @page16 id: fdfca7d6d9 (このIDを非表示/違反報告)
なっつ。(プロフ) - すっっっごく気になる所で終わっている...ゆっくりでもいいので続き待ってます...！！ (2023年3月21日 1時) (レス) @page16 id: f68b2b1abd (このIDを非表示/違反報告)
成瀬(プロフ) - すごく好きな作品です……！ 更新待ってます！ どうか無理せずに頑張ってください (2022年12月8日 0時) (レス) @page16 id: 5abadf1a2d (このIDを非表示/違反報告)
ゆずポン美味しい - これを見るのが毎日の日課じゃぁああ！…あｯすみません！更新楽しみにしてます！頑張ってください！ (2022年8月12日 2時) (レス) id: 3d7d623247 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Re: | 作者ホームページ：http://uranai
作成日時：2022年7月25日 19時
