はちみつショコラ

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____ｶﾗﾝｺﾛﾝ




「いらっしゃいませ」






わたしの心を乱す彼にはもう会わないでおこうと一瞬は思ったはずなのに、結局わたしはここにいて。







オープンしてからしばらく経った日の閉店間近に店へ足を向けた。







扉を開けたわたしに声をかけたのは紫耀くんではなくて、店の奥にも彼の姿は見当たらない。









『あの…』






オーナーいますか？と聞きそうになった言葉達を飲み込んで、口ごもる。







「すみません、はちみつショコラは本日は売り切れてしまいました。」







まだ何も聞いていないのに、接客をする彼女は今日何度目かと言うくらいに慣れた口調でそう言った。








『…そうですか、また来ます。』









紫耀くんがいなくて、買おうと思っていたそれもないのなら尚更ここに来た意味が分からない。







勝手に抱いた心の傷を癒すために勝手に会いに来た、それだけのこと。








結局人の優しさに付けこもうとするなんてことが間違っているのかもしれない。









「Aちゃん？」







なのに彼はわたしを救ってくれるのだ。









『…紫耀くんっ、』







覚えていてくれたことが嬉しくて、






さっきまで空っぽだった心がスッと満たされていくような感覚だった。









「いらっしゃい、待ってたよ。」








優しい笑顔を向けてくれる彼に、いつの間にか惹かれていたなんてまだちゃんとは気付けていないけれど。






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