閑話 ページ9
4Fフロアにて先輩刑事と話をしていた
「久世係長だ」
横顔の美しい彼女の歩き姿に一瞬心を奪われかけながら、相模はほとんど反射的にそう口にする。幽霊の復活だなんだのと騒いでいた先輩方のを思い出して、相模はこっそりと久世の足元を確認した。もちろん、透けているなんてことはなく、綺麗な細い足首がインクブルーのヒールをせわしなく動かしているのが目に入る。
ふと一緒に彼女の姿を見つけたらしい先輩刑事、本田が「本当に生きてたんだなぁ、あの人」と感慨深そうに口にした。
「そーいや先輩、昨日は短期潜入の最終日とかで察庁にいなかったんでしたっけ」
「そうそう。そんで報告に帰ってきたらフロアが静まり返ってんだよ。皆して神隠しにでも遭ったのかと不安になった」
「先輩、けっこうメルヘンチックな頭してますよね」
どこの傭兵かって顔面してるのに。とぽつりと付け加えた相模に、本田の肘うちが炸裂する。えぐり込まれる痛みに呻きながら、相模はなんとか書類を落とさないように踏ん張った。
「後から聞けば、久世さんの復帰祝いとか称して飲みに行ってたらしいじゃねーの。俺はそこで初めて、久世さんの生存を知った」
「言っておきますけど酒は飲んでないッスよ。全休取ってた降谷管理官と久世係長だけ残して、全員とっとと戻りました」
「その二人残すのは当たり前だ。積もる話も色々あるだろうしそれぐらいは察して動かねーと」
「積もる話？ あの二人なにかあるんスか」
後を引く痛さに顔を歪めそうになりながら訊ねる相模に、本田は「そーいやお前が配属されたの、久世さんが亡くなった後だったか」と頭を掻く。
「恋人同士だよ、あの二人」
「え」
「あ、今は違うのか。でも破局したってわけでもないしな……。
うーん、そこんところは本人に直接聞かないと分からん」
「え、え」
「なんだ、さっきから間抜けな
「こうッスか」
「はい失格」
ほんの気持ち程度の凛々しさを兼ね備えた相模は、しかしうろたえたように目玉を泳がせる。そのうちに頭を抱えて跪きそうな動揺のしかたである。彼の腕の中で、束になった書類がバサバサと揺れた。
「うわまっじかぁ！ 俺、そうとは知らずに係長を食事に誘ったんですけど」
「……それは、」
「よりにもよって降谷さんの女って。降谷さんに殺されませんかね、俺」
「気が多いんだよお前は。大人しく受付の上杉さん一本に絞っとけ」
続く
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さくらんぼ＆チェリー - 更新待ってます。面白お話を書いてくださり、本当にありがとうございます。感謝してもし着れません。 (2019年9月1日 15時) (
レス) id: fed8378344 (このIDを非表示/違反報告)
さかな(プロフ) - ◎たなは◎さん» ありがとうございます！ちゃんと最後まで紡ぎ、終わりを編めるよう努めますので、よろしければいつでもご観覧ください。 (2018年8月10日 18時) (レス) id: 9a66748afd (このIDを非表示/違反報告)
◎たなは◎(プロフ) - さかなさんの紡ぐ新しい世界を待ちわびていました。素敵な物語、読めて嬉しく思っています。これからも楽しみです。 (2018年8月10日 17時) (レス) id: 302b94aee9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：さかな | 作成日時：2018年8月10日 15時
