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「……仕事の方はどうだ」
ぽつりと降谷が漏らした。そのすぐに、Aが返事を返す。
「そりゃ大変なもんよ。生きてる、って楽だけど色んな所に顔を見せないといけないから厄介だね。楽しいけどさ」
「君ならすぐに慣れるさ」
「だろうね」
ゴウンゴウンとエレベーターは音をたてながら降りていく。降谷とAは、狭い空間の中でお互いの体温を意識しながら目的の階に着くことを待っていた。エレベーターの表示は9。Aの押した4Fへたどり着くのはもう少し後のことになりそうだ。わずかな沈黙の後、エレベーターの駆動音に混ざって、Aが言葉を吐く。
「何もかもが久しぶりすぎて。泣きそうなぐらい新鮮」
降谷が思わず彼女の方へ視線をよこしたのは、その声がひどく痛ましく聞こえたからだ。振り向けば、今にも泣き出しそうな表情のAの姿があった。なにかの拍子で涙がこぼれ落ちてしまいそうな、けれども狂おしいほどに喜びに満ちた表情。降谷は思う。一体、墓の下での四年間を彼女はどんな思いで、気持ちで過ごしていたのだろう。
――なにか、なにか言わなくては。
すうっと息を飲み、静かに吐く。
「そんなの、そんなの今だけだろ。すぐに日常になる。察庁へ毎日通うことも、連日徹夜でエナジードリンクが効かなくなってくることも、
「あっはは、そりゃそうだ。確かにそんなことが日常だった。そんなことばかりが。
懐かしいなぁ。――あ、でも理不尽な上司にこき使われるってのはつい最近まであったわ」
「というと」
「私らみたいな人間は、大人しく死なせてもらえないってこと。あの人は死体さえこき使うような鬼畜だからねー」
降谷はその言葉に、クマのような巨体で現場の指揮を執る鬼上司の姿を思い浮かべていた。二人が邂逅を果たした夜、水先案内を務めた深海の男だ。
その彼にどのようにしてこき使われたのだろうか。Aを失った降谷の四年間、もしかして人知れず彼女に命を救われていたことがあったのかもしれない。降谷の知らない裏で、吾妻が糸を引いてAが作戦の手助けをしていたことが。あの上司なら大いにありえる話だ。
「なあ――」
「お、着いた」
キン、とやけに胸に響くベルの音が箱の中に響く。表示を見れば、『4』の数字だけが煌々と光っていた。どうやら、目的の階に着いたらしい。Aが少し名残惜しそうに足を踏み出す。
「じゃね、降谷。お互い死なない程度に頑張ろう」
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さくらんぼ＆チェリー - 更新待ってます。面白お話を書いてくださり、本当にありがとうございます。感謝してもし着れません。 (2019年9月1日 15時) (
レス) id: fed8378344 (このIDを非表示/違反報告)
さかな(プロフ) - ◎たなは◎さん» ありがとうございます！ちゃんと最後まで紡ぎ、終わりを編めるよう努めますので、よろしければいつでもご観覧ください。 (2018年8月10日 18時) (レス) id: 9a66748afd (このIDを非表示/違反報告)
◎たなは◎(プロフ) - さかなさんの紡ぐ新しい世界を待ちわびていました。素敵な物語、読めて嬉しく思っています。これからも楽しみです。 (2018年8月10日 17時) (レス) id: 302b94aee9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：さかな | 作成日時：2018年8月10日 15時
